一人ひとりの価値観を大切に~福祉を志し、回り道して辿り着いた今~

エンカレッジ京都三条 就労支援スタッフ
▶ プロフィール
✅ 猪上 和志(いのうえ かずし)
✅ エンカレッジ京都三条 就労支援スタッフ
▼ まずは大学時代のことからお伺いしたいと思います。猪上さんは、大学で福祉の勉強をされてたんですよね?
そうですね。精神保健福祉士の資格を取りたかったのと、対個人の視点と対社会の視点の両方を学べる大学ということで、京都府立大学の公共政策学部社会福祉学科に入りました。実は一浪したんですが、現役の時と志望校は変わらず、ここを目指していました。
▼ もともと福祉の分野に興味を持ったのはどうしてだったんですか?
中学生の頃から“人”に興味があったんです。自分の周りにうつ病やPTSDなどメンタルを崩している人がいたこともあって、「人の心理」というものに自然と興味を持つようになりました。
▼ 大学時代はどんな学生でしたか?
授業には行かずに図書館で本を読んで自分で勉強するタイプでしたね(笑)。大学には福祉の道を志している仲間がたくさんいたので、そういう人たちと飲みながら熱く語るのも楽しかったです。
▼ 学びたいことがあって入学されただけあって、熱心に勉強されていたんですね(笑)。課外活動などはされていましたか?
自閉症の子どもと遊ぶサークルに所属していました。サークルで子どもたちと関わる中で、たとえば障害者と一口に言っても、一人ひとり違うので、何が線引きなのか分からないなと思いました。障害者として接するのではなく、「目の前のこの子にどう接すればいいのか?」と毎回考えさせられました。自分にとっては、大学で学んでいることを子どもたちとの関わりに活かす、という試行錯誤の機会でしたね。
インタビュー1
▼ なるほど、サークル活動は人との関わり方を学べる場でもあったんですね。
そうですね。あと、3回生の時に、そのサークルの代表になったんです。それまでの先輩の活動ぶりを見ていて、もっと上手くできると思っていたこともあって、改革を断行したんですよ(笑)。当時の自分は結構ワンマンでした。そのせいでメンバーとぎくしゃくしたり、自分はいいと思ってやっていても、周りが付いて来てくれない…という壁にぶつかりました。
「このままではいけない」と思って、ある時から自分の関わり方をガラッと変えたんです。メンバー一人ひとりの話をちゃんと聞いた上で、どうやっていきたいかを伝えるようにしました。何かやるにしても、やるぞ!といって引っ張るのではなく、こんなことやってみたらどうかな?どう思う?と提案して、本人に選んでもらうというスタイルにしたんです。
▼ かなり大きな変化ですね!実際にメンバーとの関係性も変わっていったんですか?
はい。メンバーそれぞれの良さを活かすことができるようになって、自分一人が頑張るのではなく、皆で頑張るスタイルになっていきました。(関係性が改善されて)サークルの飲み会が楽しくなりましたね(笑)。
▼ その後は、就職活動をされたんですか?
いえ、福祉職は割と就職には困らなかったので、そこまで頑張ってはいませんでしたね。でも僕はゼミの先生と関係を上手く築けなくて、そこから福祉に対して拒否反応が出るようになってしまったんです。こんな気持ちですぐに福祉の道に入りたくないなと思って、(福祉業界への)就職は一旦辞めよう、と思いました。
▼ 就職に困らなかったというのは羨ましい気もしますが…また違った難しさもあるんですね。それで、卒業後はどうされてたんですか?
2回生の頃からグループホームでアルバイトをしていたので、それを続けながら、卒業後は個別指導塾でも働いていました。
グループホームでは、30~70代の方まで幅広い年代の方が集まっていましたね。そこで夜間の世話人をしていたんですが、お世話をする相手というより、友達同士のような感覚でした。ご利用者の方の話し相手になったり、時には(ご利用者同士の)喧嘩の仲裁をしたり(笑)。そこは計4年間続けました。
塾の方は、少人数制ということもあり、一人ひとりにどう勉強してもらうかを考えながら接していました。勉強してもらうためには、まず生徒さんと仲良くなることが大事だったので、その子が好きなことを話題にしたりして。
▼ その頃から人と密に関わる仕事をされていたんですね。グループホームを辞めた後はどうしていましたか?
当時、貯金を食いつぶしつつ生活していたらお金がない!ということに気がついて(笑)。でも、ここで福祉の道に戻るよりは、まず他の業界を見てみようと思ったんです。そこで、色んな人に関われる営業職を経験してみたかったのと、京都という地域を知れると思って、不動産の会社に就職しました。
▼ まったく別の業界ですね!そこではどんなことをされていたんですか?
実際に入社してみると、いわゆる仲介・売買のような、皆さんが想像する不動産の仕事はほとんどしていなかったんです。会社の利益になるならどんな仕事をやってもいいという代表の方針もあって、在職していた9ヶ月の間、本当に色んなことをやっていました。詳しい話は差し控えますが、今思うと何も分からない新入社員がよくやっていたなと思います(笑)。
でも、やることがコロコロ変わってしまうので、先が見えなくなってしまって。市場環境の変化もあって、準備を進めていたある事業も上手くいかなくなった時期だったので、そのタイミングで辞めました。
▼ その後はどうされたんですか?
そろそろ福祉の道に戻ろうと思って、資格を活かせる仕事を探して、自閉症の子どもの放課後等デイサービスにアルバイトで入りました。でも、安全面についての運営方針など自分としては納得がいかないことも多くて、よくぶつかっていました。マネジメントのやり方もなかなか反りが合わず…結局そこは2ヶ月で辞めてしまいました。
▼ なるほど…それで、その後エンカレッジに?
その後は、半年間くらい真剣に仕事を探しました。今度こそ自分が納得して働けるちゃんとしたところに行きたいと思って(笑)。
ある時、就労支援の仕事をしている知り合いが「エンカレッジなら間違いない」と薦めてくれて。自分でも調べてみたところ、代表者が窪さんと高橋さんで、窪さんが企業目線、高橋さんが福祉目線を持っている方でバランスがいいと思ったのと、福祉事業だけでなくBoosterなど新しい取り組みも行っていて、これからの成長が見込めると思いました。
▼ めちゃくちゃしっかり調べてらっしゃったんですね!(笑)それで、入社することになったと。
そうですね。実は、エンカレッジに採用されなかったら、福祉の道は諦めようかとも思っていたんです。なので、採用されて本当によかったです。とはいえ、就労移行支援は初めての経験なので、最初は戸惑いもありました。
▼ 実際にエンカレッジで仕事してみてどうでしたか?
自分自身の経験から、働くって大変なことだなと感じていたので、ある意味、「働かなくてもいいやん。生きてるだけでOK!」と根本では思っているところがあるんですよ。でも、当たり前ですけど、就労支援ではご利用者に就職してもらわないといけないわけじゃないですか。自分でも大変だと思っていることをご利用者にやってもらうというところにまず難しさを感じましたね。
でも、実際にご利用者と関わる中で、ご本人から「就職したい」という想いを聞くうちに、ご本人がそう思うのであれば、それを叶えたい、サポートしたいと思うようになったんです。
▼ なるほど、あくまでご本人の想いが大事なんですね。
そうですね。ご利用者と関わる時も、こちらの考えを押し付けるのは嫌なので、指導ではなく必要性を伝えてご本人に決めてもらうようにしています。たとえば、就職するのであれば、こういう力が必要になりますよね。じゃあどうしましょう?という感じです。
▼ サークルの代表をしていた時と同じような関わり方ですね!ちなみに、大学で学んでいたことは、支援する上で活かせていると思いますか?
めちゃくちゃ活かせていると思いますね。細かいスキルやノウハウよりも、「本人第一」という対人支援の原理原則を学んでいたので、軸がぶれないというか。何か迷ったり困ったりした時に立ち戻れる根っこの部分を学べていたのは大きかったですね。
▼ 原理原則がわかっていれば、応用がききますもんね。実際に支援をする中で、上手くいかなかったことってありましたか?
最初に担当した方なんですが、精神的にしんどさを抱えているご利用者がいらっしゃって。自分は、苦しんでいる話を聞くことしかできなかったです。ご本人としては、問題を解決して欲しかったのでしょうが、自分は話を受け止めることしかできていませんでした。その中で、途中で担当を変えることになってしまいました。
▼ そんなことがあったのですね…反対に、上手くいった方は?
以前担当した方で、友達のように関わってくれるご利用者さんがいらっしゃって、その方とはいい関係を築けたと思います。無事に就職もできました。
それと、今までの職場では職場環境のミスマッチが続いて、精神的に病んで自殺未遂をしたこともあるという方がいらっしゃって、それでもやっぱり社会に参加したいという想いを持って通所されました。エンカレッジはやりやすい環境をつくってくれている、実習が楽しいと言ってくれたことは嬉しかったです。
▼ この仕事をする中でのやりがいってどういうところですか?
頑張っている人…いや、成長している人が近くにいることが自分にとってもすごく刺激になります。
頑張るっていう言葉はあまり好きではないんですよ。無理やり頑張るっていうイメージがあるからかな。成長しているっていうと、自分の意志で変わろうとしているっていうイメージですね。 ご利用者さんが、色んな経験を通してできることが増えていく、その変化を見られるのが自分のことのように嬉しいし、元気をもらえます
インタビュー2
▼ そんな猪上さんの今後の目標は何ですか?
始めにお伝えした通り、障害のあるなしってあまり関係ないと思うんですよ。たとえば、僕はメガネをしてますけど、これがなければ生活できない。でも、メガネがあるから普通に生活できますよね。そんな風に、ある環境においては障害があっても、別の環境では全く問題ないということが、多かれ少なかれ皆あると思います。そういう意味で、一人ひとりが輝ける、マッチする環境を見つけられることで、”障害者”の垣根をなくしていきたいと思っています。
▼ 確かに、障害者かどうかというのは、周りの環境や状況によって変化しますよね。最後に、猪上さんだったら、どんな人と一緒に働きたいですか?
人の価値観を大事にできる人ですね。エンカレッジは、福祉業界の出身者だけでなく色んな業界を経験しているメンバーがいるところが強みだと思います。それぞれの価値観を尊重しながら、自分も他の人もイキイキと働ける場を一緒につくっていきましょう!
番外編:プライベートの過ごし方
映画が好きで、ジャンル問わず年間200本ほど観ています。好みのジャンルを言ってもらえれば、いくらでもおすすめ映画をお伝えできますよ。音楽はヒップホップをよく聴きますね。あとは、温泉巡りと食べ歩き。好きな食べ物は、スイーツとカレーとラーメンです(笑)。
 この記事を書いた人
インタビュワー
✅ 喜多 佑衣
✅ エンカレッジ 経営管理部 広報担当
大阪生まれ大阪育ち。新卒入社した人材派遣会社をわずか10ヶ月で退職した後、教育系NPOや大学のキャリアセンター、企業の人事採用担当など、教育・人材に関わる仕事を経験。様々な理由で働きづらさを抱える人が身近にいた経験から、そういった方々に貢献できる仕事をしたいと思い続け、2018年12月よりエンカレッジ入社。”広報”という手段を通して、エンカレッジが掲げるビジョンの実現に向けて奮闘中。