【vol.1】大妻女子大学共生社会文化研究所 設立記念セミナー
~発達障害など就職に困難を有する学生と企業とのマッチングを支援するプロジェクト~
1)プロジェクトの企画趣旨
本セミナーは、大妻女子大学 共生社会文化研究所が発足した、発達障害学生やその疑いのある学生など「就職に困難を有する学生と企業とのマッチングを支援するプロジェクト」の一環で行われました。
このプロジェクトでは、2019年9月〜2020年1月に企業、大学、福祉関係者等を対象とした計4回の連続セミナーを開催し、就職や定着についての課題や解決策を検討します。さらに、2020年2月頃には、発達障害及びグレーゾーン学生など就職に困難を有する学生に向けた就職マッチングイベントを実施する予定です。
これまでは、企業やセーフティーネットとなる社会資源につながる機会が少なく、進路が決まらないまま卒業を迎えていた発達障害学生やその疑いのある学生を、多摩地域の大学・企業・福祉が一体となってマッチングの機会を創出していく、関東では初の試みとなっています。
このプロジェクトでは、2019年9月〜2020年1月に企業、大学、福祉関係者等を対象とした計4回の連続セミナーを開催し、就職や定着についての課題や解決策を検討します。さらに、2020年2月頃には、発達障害及びグレーゾーン学生など就職に困難を有する学生に向けた就職マッチングイベントを実施する予定です。
これまでは、企業やセーフティーネットとなる社会資源につながる機会が少なく、進路が決まらないまま卒業を迎えていた発達障害学生やその疑いのある学生を、多摩地域の大学・企業・福祉が一体となってマッチングの機会を創出していく、関東では初の試みとなっています。
エンカレッジも本プロジェクトの趣旨に賛同し、就職マッチングイベントの企画などに参画させていただいています。これを機に「ダイバーシティ就活」の取り組みを関東でも拡げていきたいと考えています。
2)設立記念セミナーの概要
10月20日(日)は、連続セミナーの第2回目が行われました。この日は設立記念セミナーということで、第一部の記念講演では、研究所顧問の村木厚子氏より「働くことを通して考える共生社会~誰もが生き生きと働ける社会を目指して~」と題して、社会や職場環境の在り方をともに考えるための話題提供が行われました。
つづく第二部のシンポジウムでは、「発達障害及びグレーゾーン学生を職業につなげる方策を考えよう~多摩から作り出す大学、企業、就労支援機関の連携~」をテーマに、大学・企業・福祉(就労支援)関係者が登壇し、それぞれが感じている課題を共有するとともに、関係機関の役割や連携の在り方、就職につなげるための具体的な方策などについて意見交換を行いました。エンカレッジ代表の窪も、話題提供者としてお話しさせていただきました。
つづく第二部のシンポジウムでは、「発達障害及びグレーゾーン学生を職業につなげる方策を考えよう~多摩から作り出す大学、企業、就労支援機関の連携~」をテーマに、大学・企業・福祉(就労支援)関係者が登壇し、それぞれが感じている課題を共有するとともに、関係機関の役割や連携の在り方、就職につなげるための具体的な方策などについて意見交換を行いました。エンカレッジ代表の窪も、話題提供者としてお話しさせていただきました。
この記事では、第一部で行われた、村木厚子氏の記念講演のダイジェストをお送りします。第二部のシンポジウムの内容については、【開催レポートvol.2】をご覧ください。
3)村木厚子氏による記念講演のサマリー
第一部:記念講演「働くことを通して考える共生社会~誰もが生き生きと働ける社会を目指して~」
村木 厚子 氏(共生社会文化研究所顧問/元厚労省事務次官)
村木 厚子 氏(共生社会文化研究所顧問/元厚労省事務次官)
▶ 障害のある人との出会いと原体験
1)障害の有無は関係ない?
労働省に入り、人が働くお手伝いを長くやってきたが、20年ほどして障害者担当になった。当初は非常に不安だった。なぜなら、それまでは障害のある人に出会ったことがほとんどなく、自身の発言が差別や誤解を与えることにつながるのではないかと考え、思い切った仕事ができなかった。
そんな私を救ったのは、障害者雇用を進めている企業の社長。社員の良いところを引き出すのが社長の仕事で、そう考えれば障害の有無は関係ないと言われた。その言葉を聞き、働く人のことを考えるのであればこれまでの20年と同じだと気づき、そこからは思いっきり仕事ができて楽しかった。
そんな私を救ったのは、障害者雇用を進めている企業の社長。社員の良いところを引き出すのが社長の仕事で、そう考えれば障害の有無は関係ないと言われた。その言葉を聞き、働く人のことを考えるのであればこれまでの20年と同じだと気づき、そこからは思いっきり仕事ができて楽しかった。
2)障害者福祉の世界を見た驚き
数年後、厚生労働省で障害者福祉の担当になった。最初に驚いたのが、福祉施設にいる障害者が、企業で働いている障害者よりも軽い障害の方々に見えたことであった。疑問に思い、障害者団体の方に聞いてみると「施設にいる9割の人は企業で働けると思う」と言われた。そこから、障害がある人も働けるということを言い始めた。
ある時、特別支援学校の高等部の父母向けの話をする機会があり、皆さんのお子さんは働けますよと言った。すると、ある親御さんから、今日の話を(子どもが)小学1年生の時に聞きたかったと言われた。そこで初めて、教育からこの問題を解決していく必要があると気づいた。
ある時、特別支援学校の高等部の父母向けの話をする機会があり、皆さんのお子さんは働けますよと言った。すると、ある親御さんから、今日の話を(子どもが)小学1年生の時に聞きたかったと言われた。そこで初めて、教育からこの問題を解決していく必要があると気づいた。
3)「アメリカで障害者になれてよかった」
ある時、「私はアメリカで障害者になれてよかった」という人に出会った。彼は怪我が原因で、大学生になってから車いすになった人であった。手術から目覚めた時に、ドクターから「あなたの夢は変えなくて良いが、夢を叶える方法は変わります」という言葉をもらった。
一方、日本に帰国してから、同じような境遇の人に話を聞くと「早く障害を受容しなさい。あなたは今までのあなたではないのだから、あなたの夢を見直しなさい」と言われるそうだ。だから私はアメリカで障害者になれてよかった、と言っていた。 そんな彼から立てる車椅子を見せてもらい聞くと、歯医者や美容師用の車椅子であった。日本では脊椎損傷している人がそのような仕事に就くことはほとんど考えられない。本当に驚いたことであった。 考え方が変わることで社会への参加が変わる。医療モデル、社会モデルなどと言われるが、いかに社会の問題のほうが大きいかということをこの体験から教えてもらった。
一方、日本に帰国してから、同じような境遇の人に話を聞くと「早く障害を受容しなさい。あなたは今までのあなたではないのだから、あなたの夢を見直しなさい」と言われるそうだ。だから私はアメリカで障害者になれてよかった、と言っていた。 そんな彼から立てる車椅子を見せてもらい聞くと、歯医者や美容師用の車椅子であった。日本では脊椎損傷している人がそのような仕事に就くことはほとんど考えられない。本当に驚いたことであった。 考え方が変わることで社会への参加が変わる。医療モデル、社会モデルなどと言われるが、いかに社会の問題のほうが大きいかということをこの体験から教えてもらった。
▶ 障害者雇用率は「宿題」
雇用の面では障害者雇用促進法で企業に雇用義務を課している。障害者雇用率は企業に与えられる「宿題」のようなものだと考えている。
たとえば、勉強したいという気持ちにはなっていなくても、宿題があれば勉強する。しかし、勉強している中でだんだんと自分のやりたいこと、将来が見えてくると、今度は宿題がなくても自分で勉強するようになる。それと同じで、雇用率があることが、障害者雇用を進めるきっかけになると思う。
たとえば、勉強したいという気持ちにはなっていなくても、宿題があれば勉強する。しかし、勉強している中でだんだんと自分のやりたいこと、将来が見えてくると、今度は宿題がなくても自分で勉強するようになる。それと同じで、雇用率があることが、障害者雇用を進めるきっかけになると思う。
▶ 累犯障害者の「負の回転ドア」
新規受刑者の4分の1が知的障害の疑いがあり、出所しても7割は一年未満で再犯者として戻ってくる。
→出所した際に支えてくれる人がいるか、仕事に就いて世の中のために働く機会があるかどうかが分かれ目になっている。
→出所した人だけでなく、障害者や高齢者など社会を支える一員になりたい人はたくさんいる。ダイバーシティを実現することの良さが認知されていくとともに、このような方々が今後もっと表に出てくるだろうと期待している。
→出所した人だけでなく、障害者や高齢者など社会を支える一員になりたい人はたくさんいる。ダイバーシティを実現することの良さが認知されていくとともに、このような方々が今後もっと表に出てくるだろうと期待している。
▶ 日本のこれから~包摂的成長の重要性~
✅ 「包摂的成長」という概念がある。G20雇用労働大臣会合のテーマにもなっており、世界的なキーワード。障害のある人や女性、若い人など様々な人を社会の支え手として巻き込んでいくことをできた国だけが持続的に成長することができる。
✅ AIに置き換えられない能力(読解力、数的思考力)は、成人力調査の結果、日本が一位。一方で、日本から新しい技術は生まれないのはなぜか?技術やスキルは悪くないが、日本は異なるものとつながる力が弱いとされている。
✅ 当研究所の大きな柱でもある産官学連携について、産・学・官が国内外でつながることができれば日本は強くなると言われている。多様であることは変化に強いということ。組織全体、社会全体のダイバーシティに取り組むことが、日本の持続的成長には非常に重要である。
▶ 「働く」を通じた共生社会づくり
・働く人は何を求めているか?
―仕事が世のため、人のためになっているか。
―ワクワクする仕事かどうか。
―仕事を通じて成長できるかどうか。
→これらは健常者、障害者に関係なく働く人全員に通ずること。
→これらを提供できている職場かどうかを追求していってほしい。
―ワクワクする仕事かどうか。
―仕事を通じて成長できるかどうか。
→これらは健常者、障害者に関係なく働く人全員に通ずること。
→これらを提供できている職場かどうかを追求していってほしい。
▶ 最後に
企業か福祉かといった分野に関わらず、経済的に回っていかなければ雇用は確保できないので、いずれにしても経済を回す視点は欠かせない。そのうえで、どのような職場が良いのかを研究して、ノウハウを磨いていくことも欠かせない。そして、本来のミッション・価値観を追求すること。これら3つを追い求めていくことで「働く」を通じた共生社会が完成すると考えている。
以上、第一部の記念講演のサマリーでした。第二部のシンポジウムの内容については、【開催レポートvol.2】をご覧ください!