IT・技術力のある新卒学生×ダイバーシティ雇用「働きかたトライアル3Days Day1」開催レポート

8月1日(木)、京都リサーチパークで行われたKRP WEEK「働きかたトライアル3Days Day1」にて、エンカレッジ代表の窪が登壇しました。テーマは「IT・技術力のある新卒学生×ダイバーシティ雇用」
IT技術など専門性はあるものの、コミュニケーションの苦手さや障害により配慮が必要な学生たちの「強み」と「働きやすさ」の両面にフォーカスした、新しい雇用のカタチ(=ダイバーシティ雇用)をテーマに話題提供をさせていただきました。
また、このような学生の採用にご興味をお持ちの企業・大学・支援機関などの参加者の皆さまと意見交換も行いました。
KRPイベント
 
この記事では、第一部・第二部の話題提供のサマリーと、第三部の意見交換で参加者の皆さまから頂いたご意見についてまとめたレポートをお送りします!
特に、IT・技術など専門性があるものの配慮が必要な若者の採用にご関心のある方、障害のある若者の社会移行や就職支援に携わられている方には、ぜひご覧いただきたい内容になっています。

第一部:話題提供(1)~障害学生や働きづらさを抱えた学生のキャリア支援における現状と課題~

京都大学学生総合支援センター 障害学生支援ルーム チーフコーディネーター(准教授)村田 淳 氏
第一部
 

■障害のある学生の現状

障害のある学生数は年々増加しており、今後も増加すると考えられる。しかし、先進国と比べると、日本では、大学等高等教育機関で学んでいる障害学生数はまだまだ少ない。
特に精神・発達障害のある学生の場合、他の障害種別と比べて就職率や卒業率(最終年次の学生が卒業する割合)が低くなっており、ここに課題があると考えられる。

■障害学生の就労移行に関する課題

(1)就職活動が複雑である
一般雇用と障害者雇用とで就活の進め方が異なる、就労支援機関や障害福祉サービスの利用の複雑さなどがあり、個別性が高い。
(2)モデルケースを見つけづらい
ロールモデルが見えづらいことにより、就職後のイメージを描きにくい。
また、5年前、10年前のロールモデルが、今就職活動をする学生にとってのロールモデルになるかと言えば、そうでない場合もある。
自分自身がロールモデルになっていかないといけない状況とも言える。
(3)支援関係者が多岐にわたる
大学はあくまで教育を提供する場であり、就労支援機関ではないため、学内でできることには限界がある。
また、支援者によって知識・スキルや経験値に良くも悪くもばらつきがある。

■就職活動時に障害学生が抱える課題

・「働く」のイメージを描きづらい
▶ そもそも世の中にどんな仕事があるか?を知らない(医師、弁護士のように資格名=職業になる専門職、運送会社のドライバー、コンビニ店員など日常的に接する職業くらいしかイメージがない)
・どのような仕事に就きたいのか、あるいは向いているのか分からない
・苦手なことはたくさんあるが、得意なことが見つからない
▶ 何を自己PRとすればいいのか分からない
・やりたい仕事と向いている仕事が重ならない
・卒業に向けて必要な学業(卒業論文など)と就活の同時並行が難しい
▶ 学業を優先することで、進路未定のまま卒業することになる
など、複合的な課題を抱えている。
就職活動時に障害学生が抱える課題
▲話題提供の内容をグラフィック化したものです。併せてご覧ください。 

■障害学生が社会に移行する流れ

学内外の資源を上手く活用しながら社会につながっていくことができればよいが、過去にどこの支援にもつながっていない人が、卒業後数年経ってから支援室につながってくるケースも多い(京都大学の事例)。
在学時にはそこまで困り事が顕在化しておらず、就労にも問題がなさそうに見えても、いざ働き始めてみると様々な難しさを抱えて職場に適応できずに、社会から取り残されてしまう層が一定数存在する。
例)大学卒業後に新卒で就職したが、早期退職してしまい、その後数年の引きこもり期間を経て、発達障害の診断を受けて、もう一度社会移行をやり直そうとする など。
目先の就活が上手くいくか?だけに囚われすぎてしまうと本質を見失ってしまう。彼らなりのやり方で、社会で存在し続けられるかどうか=継続性が大事である。

■社会移行のために大学ができること

教育を保証するための修学支援(合理的配慮の提供)は大学でやるべきことであるが、これだけで十分ではない。
そこで「移行」という概念が出てくるが、大学から就職という一部分の移行ではなく、もっと長期的に見た移行支援が必要。つまり、就活を乗り切るためのテクニックを教える支援ではなく、卒業後に社会で生活していけるような支援が求められている
具体的には・・・
(1)自己理解を深める
自分でできること/できないこと、工夫したらできること/配慮をお願いすることについて理解する。
✅ 得意なことであれば能力を発揮でき、ストレスも少ない。
✅ 苦手なことを克服するという方向性だけではなく、他のことでいかに補えるかを考えることも大事。
✅ 自己理解が進んでいれば、会社でも環境を調整する、仕組みを整備するなど工夫することができる。
(2)セルフアドボカシー(自己決定の権利)の力の獲得
自分のことは自分で決める力、自分のことを発信していける力を養う。
社内の中で自分が生かされる場を探していく力をつけることも大事。
(3)生活習慣の安定
生活をしていく上では、仕事や勉強以外の時間も多いので、生活習慣そのものを安定させることも大事。

■学内連携・学外連携における支援担当者側の課題

(1)学内連携が進んでいない
障害学生支援部門と就職支援部門での学内連携が取れている大学が少ない。
(2)学外機関との連携が難しい
地域の社会資源にどうやってつながっていけばいいかノウハウを持っていない。
(3)障害学生への支援に関するノウハウが不足している
障害者雇用か一般雇用かという雇用枠の問題ではなく、先にその人自身に合う仕事や働き方、就職の仕方を考えた上で、結果としてどうするか?が出てくるべき。

■まとめ

日本型の雇用では計画的人事が行われており、その計画に基づいて採用を行うため、すべての面において平均点以上のジェネラリストが求められがちである。
一方で、障害学生の中には、ある部分において高い能力を発揮するような、ある種の才能やユニークさをもった学生もいる(画像認識力が高く、プログラムのバグをひと目見ただけで気づくなど)。
社会の中で彼らを生かさない手はないんじゃないか?と考えている。
第一部まとめ
 

第二部:話題提供(2)~障害学生にとっての新しい雇用の形「ダイバーシティ雇用」とは?~

株式会社エンカレッジ 代表取締役 窪 貴志
第二部
 

■障害学生の推移と企業就労への課題

法定雇用率の拡大などにより障害者雇用は売り手市場になっているが、その中でも精神・発達障害のある学生の就職率は、他の障害種別と比べると低くなっている。
もう一つの大きな課題として、一般雇用で就職した発達障害のある人は、入社1年後に約3分の1しか残っていないというデータもある。
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ゴールは、就職/採用ではなく、定着=就職後も働き続けられるかどうか?

■課題の背景(1):目に見えやすい障害と目に見えにくい障害の違い

□目に見えやすい障害(身体障害など)
周囲が配慮の必要性や必要な関わり方を理解できるため、採用・定着しやすい。
□目に見えにくい障害(精神・発達障害など)
何を配慮したらいいか/関わり方がわからないため、採用、定着しにくい。

■課題の背景(2):精神・発達障害のある学生の悩み

一般雇用か?障害者雇用か?の狭間で揺れる。
□障害者雇用の場合
軽作業や清掃業務など、仕事のバリエーションに偏りがある。それが良い悪いではなく、発達障害のある学生にも色んな適性やスキル、志向性を持った人がいることを考えると、合わない/やりたい仕事がない人も多いのではないか?
□一般雇用の場合
社会性が必要になるため、選考時や入社後もネックになってしまう。(日本型雇用の場合、ジョブローテーションがあり、様々な部署への異動やそれに伴って色んな仕事を経験する必要がある)
また、障害を隠して就職することにより、必要な配慮を受けられずに早期離職につながる可能性も
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障害学生=障害者雇用ではなく、本人にとってどちらが向いているか?
またどちらを選んだとしても活躍できるよう支えることが重要。
精神・発達障害のある学生の悩み
 

■これらの課題を解決する雇用の在り方=ダイバーシティ雇用

□「ダイバーシティ雇用」とは?
(1)障害者雇用枠/一般雇用枠に囚われず、強みも配慮事項もオープンにする。

(2)第三者による支援や推薦を伴う。
【過去の取り組み事例】
2019年2〜5月に、学内で事前に情報を整理した上で働きづらさを抱えた人を安心して社会に送り出す就職マッチング会を実施。
□準備フェーズ:自己PRや配慮事項などをまとめる
学生一人では上手く準備を進められないことも多いため、学内の支援者(障害学生担当、就職支援担当など)が伴走者としてサポート。
□マッチングフェーズ:マッチング会に参加、その後職場見学や実習を経て選考へ
障害者雇用/一般雇用、事務系/IT系など複数のパターンを用意。
マッチングしなかった場合、就労移行支援などの支援機関へつなぐ。
□結果
参加学生34名中、11名が内定。17名は、今回は就職が決まらなかったが、支援機関につながった。

■専門的に学んできた障害学生のマッチングにおける課題

□一般雇用の場合
社会適応度(社会性、コミュニケーションなど)の観点で採用されにくい。
□障害者雇用の場合
専門性を活かせる機会、仕事が少ない。

■目指したいマッチングのための歩み寄り

企業側、学生側双方が歩み寄ることでダイバーシティ雇用が実現できると考えている。
□企業側の歩み寄り
・一般雇用の場合
従来のメンバーシップ型雇用だけでなく、専門性を活かした仕事に絞り込むジョブ型雇用も進めていく。併せてその人の強みを活かすために必要な配慮を検討する。
・障害者雇用の場合
より専門性を活かせる仕事を創っていく。
□学生側の歩み寄り
・自己理解を深める(できること/できないことの明確化など)
・社会性を身につける
・必要な配慮を見える化する

■ダイバーシティ雇用の実現に向けて

今後、様々なパターンでマッチングの機会を創っていく。大学・企業・行政などが連携して、今まで見えていなかった人材が社会で生かされる機会を創っていきたい
今年度初の取り組みとして、立命館大学と共催で、障害学生がIT技術など専門性を生かして働く「ダイバーシティ雇用」を目指す就職マッチング会830日(金)に実施予定。
ダイバーシティ雇用の実現に向けて

第三部:全体での意見交換会~それぞれの立場から感じていることや必要そうなこと/実現に向けた課題を考えよう~

第三部では、参加者、話題提供者を含め全体での意見交換を行いました。ここでは、参加者の皆さまから頂いたご意見などをご紹介します!
第三部1
 
第三部2
 

◆障害のある方の採用における課題と可能性

□企業側の立場で考えると、専門性を持った障害学生を受け入れる場合、専門性をどのように評価するのか?専門性を活かせる仕事をどのように設計するのか?といったところの対応が難しい。そこのサポートが必要ではないか。
□発達障害のある方と一緒に働いている立場としては、「満遍なくできる」ことを求めるのはやはり難しい。
また採用の時点で、何ができる/できないか、どんな仕事や働き方をしてもらったらいいのかを正確に推し量るのは難しく、実際にやってみないとわからない面も多い。最終的には「この人と一緒に働けるか?」という人物評価の側面が大きくなる
□企業側の不安な点としては、一度雇用してしまうと、もし合わなかったとしても雇い続けなければならないのでは?という点だと思う。雇用する手前にトライアルの機会があれば、お互いに合う/合わないを見極めることができるのではないか
□彼らを採用してあげてください、ではなく、彼らの持つ能力を評価できるか、要はその能力に対価を支払えるかだと思う。従来の雇用形態に当てはめようとするとそれ自体ハードルになってしまうので、たとえば単年度の契約など、お互いに判断するためのトライアル的な雇用でも十分に彼らを評価していることになると思う。
□雇用したら配慮が必要となると足踏みしてしまう企業も多いと思うので、たとえば業務委託などの形で実際に任せたい仕事をやってみてもらって、その実績をアピールしてもらえるといいのではないか

◆障害のある学生の就職活動における課題と可能性

□一般雇用か障害者雇用かで揺れ動く学生に向けては、自分にはどんな働き方が合っているのかを判断するためにも、インターンシップなど事前に働くことにチャレンジできる機会が大切ではないか。企業側もインターンの中でその人の働きぶりを見られるので、採用につながる可能性もある。
□大学側の立場としてはインターンシップが非常に有効な手段であることは認識しているが、通常の授業で精一杯で他の活動に割ける余力がないことも多い。 また卒業してからトライアル的な雇用となると、「正社員になれなかったらどうしよう?」と心配する学生も多い。そこで能力が認められれば次につながるよと伝えても、働いた経験がなく、自身の能力が認められるか分からないと不安を感じる学生にとっては、それ自体がストレスになってしまう。
□キャリア教育やインターンシップなど働くことを経験できる授業も増えているが、障害学生の場合、そういった授業を履修していないことも多い。
そもそもキャリア教育自体が、通常の就職活動で求められるスキルを必要とするような、画一的なものになってしまっている。 また、良くも悪くも、日本ではみんな就職して正社員にならないといけないというような同化圧力が働きやすい。多くの人と違う選択をとることの難しさは、キャリア教育においても存在する。キャリア教育にもダイバーシティが必要
□新卒一括採用は、企業にとっては計画的人事の中での活動であり、そこで求められる人材は、どうしても画一的なものになってくる。特定の人と仕事を結びつけるジョブ型雇用には不向きな仕組み。
また障害のある学生の場合、特定の時期に、多くの人と比べて、能力を認めてもらうとなると難しさがある。彼らのタイミングで企業との接点をつくり、能力を認めてもらうプロセスがあれば。新卒一括採用を見直そうという今の動きは、彼らにとってはポジティブなことだと思う。
ただ、大多数が選択しているルートに乗らなくてもいいとなった場合、じゃあどうすればいいの?ということにもなる。
□大学側の立場としては、企業には、新卒採用であっても時期を限定するのではなく、色んな時期で見てほしい。
障害のあるなしに関わらず、メンタルダウンして大学に来られない時期があった、留年などで空白期間がある学生の場合、通常の就活ではそこがネックになってしまう。本人が強みや専門性をアピールする前に、そのマイナスをどう説明するか?が問題となってしまい、本質が見えなくなってしまう。そこの説明が必要なく、個人を見てもらえる機会があればいいのではないか。

◆障害のある方への配慮についての課題と可能性

□新卒採用で発達障害のある学生を採用した。面接で詳しく話を聞いて、強み弱みも把握した上で、配慮が手厚い特例子会社に入社してもらったが、そこまでやっても活躍できているか?と言われれば疑問符がつく。配慮事項を明確に打ち出してもらって、企業としてそこをどこまでサポートできるのかを事前に検討することが大事なのではないかと思う。
□仕事柄、客先に常駐する形態のため、お客様とのコミュニケーションがとれるかという問題で採用はしたものの配属時に苦戦することがある
採用担当側では理解して採用していても、それを受け入れる現場側がついてこられていないこともあり、会社全体としてどう受け入れるか?はまだまだ模索中。
精神・発達障害は目に見えにくい障害であるため、受入後のイメージが湧きにくいのではないか。書面や面接では分からないことがあるので、実習でお互いに判断するのが今のところ有効な手段だと思う。
□会社として必要な配慮が複数になってくると現場は混乱してしまう。この人にはこう、あの人にはこう、という風に配慮を分けて考えるのではなく、障害のあるなしに関係なく、他の社員も含めて働きやすい環境を整える配慮ができればいいのではないか
配慮といっても、逐一手助けをしなければいけないわけではない。その人にとって働きやすい環境をつくり、あとは普通に働いてもらうという形で十分に活躍してもらえる
たとえば、仕事のペースを人に合わせることが難しい人には、その人のペースで進められる業務を任せる、家事援助を利用している人には、家事援助に来てもらう曜日だけ午前中の勤務でOKとするなど。
従来の雇用形態だと、週30時間以上の勤務など制度上の枠にどう当てはめるか?を優先することになるが、たとえば週28時間でも力を発揮してもらえるならそれをよしとできるか。雇用枠から脱却できれば面白いことができるのではないか
企業さんには「うちはこういう人は採用できるけどこういう人は採用できない」と言ってもらっていい、とお伝えしている
ダイバーシティ雇用を実現するといった時には、やはり満遍なくというのは難しい。一人ひとりにコストかけるのではなく、どこは変えることができて、どこは変えられないのかを明示することで、そこに合う人に力を発揮してもらえる。
またダイバーシティという概念には、(ここにいる)皆さんも含まれている。全員がダイバーシティの一員であるということを考えると、配慮は間接的に自分たちにも影響する。たとえば、発達障害のある方が通院のために午後休みます、となった時に、他の社員も有休をとっていいんだ、という空気が流れたり、情報共有のために朝礼を行うことで、各自の予定を全員で共有できて問題が起こりにくくなったり、といった効果がある。
ダイバーシティ雇用3
ダイバーシティ雇用4
イベントレポートはいかがでしたでしょうか?エンカレッジでは、今後もダイバーシティ雇用の実現に向けて、大学・企業・行政などと協力関係を築きながら、様々な実践を積んでいく予定です。
今後の動きにも、ぜひご注目頂ければ幸いです!