「みんなでサポート就活」総まとめ 参加学生の分析と就職結果を発表!

精神・発達障害のある学生など就職に困難さを抱える新卒学生を主な対象とした就職マッチングイベント「みんなでサポート就活」。今年2月の開催から約4ヶ月が経ち、参加学生の進路が続々と決定してきました。
この記事では、みんなでサポート就活の総まとめとして、参加学生の分析やそれらの結果から分かった今回の取り組みの成果と課題、今後に向けた展望などについてお伝えします!
 

1)みんなでサポート就活とは?

「みんなでサポート就活」とは、これまで就活に取り組んできたが上手くいかなかった人、卒論・修論などを提出してから就活しようと決めていた人など、年度内になるべく内定を取りたい、と願う卒業回生の学生向けに企画した就職マッチングイベントです。 今回は、大学など高等教育機関の支援者や、行政の支援関連機関、地域の就労移行支援事業所など、産官学が協力・連携して実施しました。
イベントを開催して終わりではなく、学生の皆さんが参加を決めてから内定を得られるまでの間、さまざまなサポートを受けながら、安心して就活を進められるよう企画しました。さらに、残念ながら今回は就職が決まらなかった学生には、卒業後に利用できる支援機関の紹介も行いました。
売り手市場と言われる昨今においても、たとえば精神・発達障害のある学生や、コミュニケーションが苦手な学生など、就職に困難さを抱えている学生は一定数おられます。就活といえば一人で進めるもの、という認識が一般的ですが、一人で頑張っていてもなかなか上手くいかない…という学生の皆さんを、さまざまな立場の方々がサポートし、歩み寄りながら、みんなで社会に送り出す、新しい就活の形にチャレンジしました。
 

2)大学など22校、学生34名が参加。内定者11名!

今回のマッチングイベントは、一般雇用と障害者雇用(事務系・IT系)の3回に分けて実施し(https://en-c.jp/news/news-7514/)、合計で22校(短大・大学院含)から34名の学生が参加しました(※)
《図1:みんなでサポート就活 参加者と内定者の属性分析》
参加者と内定者の属性分析
 
今回参加した学生のうち、障害の診断がある学生は29名、診断のない学生は5名ということで、多くは障害のある学生でした。一方で、診断はあるが、障害者手帳を持っていない、もしくは開示しない就職を希望しており、一般雇用の回のみ参加した学生も3名いました(図1参照)。

特に発達障害のある学生の場合、一般雇用か障害者雇用かどちらを選べばいいのかと悩む人も少なくありません。今回、診断のある29名中17名の学生は障害者雇用での就職を選択していましたが、12名の学生は一般雇用の回にも参加しており、学生自身の心の“揺れ”をこの数字からも伺うことができます。
今回のイベントを通じての内定者は、34名中11名で、内訳としては、障害者雇用7名、一般雇用4名でした。一般雇用で内定した学生のうち、障害の診断がある学生は3名おり、障害の有無に関わらず、大学で学んできた専門性を評価されて採用が決まった学生もいました。
 

3)今回就職が決まった学生はどんなタイプだったか?

今回の参加学生を、専門性と社会適応度(社会性・コミュニケーション・勤務の安定等)のマトリックスで整理してみると、以下の三つのタイプがあったのではないかと考えています。
《図2:みんなでサポート就活の結果から見る成果と課題》
結果から見る成果と課題
 
タイプ(1):内定が決まらなかった学生
タイプ(1)は、学業と就職活動の両立が難しいなどの理由で、これまで就職活動に全く取り組めていなかった層です。専門性があればそこが評価されることもあるのですが、特筆すべき専門性を持っていない場合は、就職への準備度が高まっていないことや、自己分析の不十分さの方が目立ってしまい、企業からなかなか評価されにくいという現状がありました。
タイプ(2):障害者雇用の事務職種でマッチングした学生
タイプ(2)は、これまで就職活動にとても真面目に取り組んでいたけれどもなかなか内定が出ずに悩んでいた層です。物事をコツコツと積み上げていける強みがあり、また、就職活動の中で「自分にはこれができる/できない」という一定の自己理解が進んでいたと考えられます。
タイプ(3):IT職種でマッチングした学生(一般/障害ともに)
タイプ(3)は、専門職(主にプログラマー職)での採用です。大学でIT・プログラミング等を専門に学んできた3名が、IT系の中小企業に採用が決まりました。IT人材不足などの影響により、中小企業にとってはIT系職種での採用(特に若手人材)は容易ではありません。社会性は入社後の成長に期待し、専門スキルを評価するこの採用の形は、これから様々な可能性が広がりそうです。
 

4)就職が決まらなかった学生は、次の支援機関へ

発達障害のある学生や、コミュニケーションが苦手な学生が進路未決定のまま卒業してしまい、その後どうなったのか分からないというケースは少なくありません。もちろん、卒業後主体的に就活をしたり、公務員試験の勉強をしたりする人もいますが、中にはニート・引きこもりにつながってしまう人がいることも否定できません。
そのため、卒業後に彼ら彼女らが安心して利用できる支援機関につなぐことは、とても重要な役割であると考えています。
みんなでサポート就活では、今回は就職が決まらなかった23名のうち、17名がOSAKAしごフィールド(大阪府)や当社の就労移行支援事業所、その他支援機関につながりました。さらに、ご本人が希望すれば、みんなでサポート就活に参加するための準備として用意した自己PRや配慮をお願いしたい事項、支援者からの紹介文等は、Boosterキャリアを通じて次の支援先にそのまま引き継ぐこともできるようになっています。
 

5)専門性を活かした新しい雇用の形

今回のみんなでサポート就活を通して、どういったタイプの学生が就職につながりやすいのか、一定の傾向が見えてきました。そこで、今後は、従来の障害者雇用を推進するのはもちろんのことながら、新卒採用においてIT・技術系などの専門性を活かした雇用の形を新たに創っていきたいと考えています。
現在の障害者雇用では、一定の配慮が受けられ、働きやすさは整いつつあるものの、専門性が評価される形の雇用はまだ多くありません。専門的な知識・スキルを活かして働いていきたいと考える発達障害のある方にとっては、働きがいやキャリアアップの面で物足りなさを感じることもあります。
一方で、一般雇用での就職を目指そうとすると、社会性やコミュニケーション力などの観点から、なかなか採用されにくかったり、職場で配慮を受けにくいといった課題があります(図3参照)。
(図3)
一般雇用での課題
 
そこで、企業側には、障害者雇用であればより専門性を評価する仕事をつくること、一般雇用であれば欧米のジョブ型雇用のように、専門性に特化した職種での募集や会社としての配慮という面で歩み寄っていただくことにより、上記のような課題の解決につながるのではないかと考えています。
一方で、学生・求職者側は自己理解の促進、社会性の習得と、専門性およびお願いしたい配慮を見える化することも必要で、これら双方の歩み寄りによって、マッチングを生み出せるのではないかと思います(図4参照)。
(図4)
マッチングのための歩み寄り
 
ありがたいことに、複数の企業担当者の方にお話ししたところ、興味を持って下さっています。また、各大学の支援者の方々にもご協力いただきながら、実現に向けた話し合いを進めています。
課題はたくさんありますが、一つずつクリアしながら新たな雇用の創出に向けて尽力していきたいと思います。
(※)3日間実施のうち、学生は自身の希望に合わせて参加日を決めることができたため、1日のみ参加する学生もいれば、3日間とも参加する学生もいました。
✅ 3日間参加:3名
✅ 2日間参加:13名
(内訳)
▶ 障害(事務系)・障害(IT系):7名
▶ 障害(事務系)・一般:4名
▶ 一般・障害(IT系):2名
✅ 1日間参加:18名
(内訳)
▶ 障害(事務系):9名
▶ 一般:8名
▶ 障害(IT系):1名