そこで今回、障害学生や就活に難しさのある学生の支援に携わる大学の皆様にご登壇いただき、ウィズコロナ・アフターコロナ時代における就職活動の変化や、大学としてどう対応していくべきか、学内外がどのように連携すべきか、といったテーマで、情報提供と意見交換を行いました。当日は、全国から約80名の大学関係者の皆様が参加され、本テーマに対する関心の高さが伺えました。
第一部「ダイバーシティ就活の取り組み報告について」のレポートは、こちらをご覧ください。
また、本ウェビナー当日の動画もご覧いただけます。本記事と併せてご視聴ください。
第二部:パネルディスカッション
~今、障害学生や就活に難しさを抱える学生の就職支援はどうすべきか~
関西大学 学生相談・支援センター 藤原隆宏 氏
成蹊大学 キャリア支援センター 浅香啓 氏
株式会社エンカレッジ 窪貴志
ファシリテーター:
京都大学学生総合支援センター 障害学生支援ルーム 村田淳 氏
(村田)
エンカレッジでは、「家でも就活オンライン」などオンラインを活用した取り組みをされていますが、学生の「就職準備性を高める」ことについては、オンラインの仕組みを使うことでどんな可能性があると感じていますか?(窪)
就職準備性ということを考えると、今の4年生よりも3年生の方が影響を受けるのではないかと考えている。
特に精神・発達障害のある学生などは、インターンなど様々な社会体験の場に出ることで、気づきを得たり、成長していく学生が多いが、コロナの影響でその機会が減少することが考えられる。
一方で、企業側も、今までやっていたことを止めるだけではなく、今までのやり方に代わる何かを新しく作らないといけない、むしろこれを機にどんな機会を提供していこうか、と考える企業も増えてきているので、そういう意味ではチャンスであると捉えている。(村田)
オンラインは仕方なくやるもの、ではなく、いい部分をどう活かすかという視点で考えればむしろ学生にとっての選択肢を増やしていけると考えられます。実際に今、就職活動がオンライン化していることで、企業の採用の傾向や学生の見方についてどんな変化があると感じていますか?(窪)
昨年までであれば、3~4月は学生も企業も活発に活動する時期だが、今年は様子見の状態が続き、6月から本格的に取り組んでいるところも多い印象。就活が全体的に後ろ倒しになっており、採用活動が終わっていない企業も少なくないように感じる。
障害学生の就活という点でいうと、面接がオンラインになったことで、例えば聴覚・視覚障害の学生への対応方法、配慮の仕方が分からないという企業側の声も聞いている。これには大学からの情報提供が有効なのではないか、と考えている。
(浅香)
4月時点で約4割の企業が採用活動をストップしているというデータもあり、体感的にもそのように感じている。6月から採用活動を再開し始めた企業も多く、夏~秋に向けて今年は就職活動が長期化していくのではないかと踏んでいる。
選考のオンライン化が進んでおり、大企業ほどオンライン化している印象を持っている。今の3年生については、オンラインでのインターンの可能性の模索や実践が進むのではないか。
完全にインターンを見送る、採用を減らすとまで言っている企業はまだ少ない(1~2割程度)が、今後の社会情勢に合わせて変化はありそう。(村田)
今までやってきたことが全てオンラインになるわけではないが、就職に向けて学生に意識してもらわないといけないこと、必要な準備なども変化してくると考えられます。
学生と直に接している支援部署として、コロナ前と変わらず必要なこと、今後必要になりそうなことについてはどうお考えですか?
(障害の有無をいつのタイミングで確認するか、外部とのつながりどう作っていくか、なども含めて)(藤原)
「環境が変わることで障壁が変わる」ことを感じている。例えば、これまでは授業への出席が困難だったが、オンライン授業になってから難なく受けられるようになった学生や、反対に、先生との個別のコミュニケーションが取りにくくなったことで、授業を受けにくくなった学生もいる。
障害をいつの段階で確認するかについては、修学支援においては配慮が必要という前提なので、キャリアにおける対応とは異なるかもしれないが、それでも自分に困り事があると自己認識していない学生もいる。それには、「ここは配慮をお願いしないといけないですよね」ということを一つ一つ丁寧に対話しながら、自分で気づいてもらえるよう働きかけをしている。
オンラインであろうとなかろうと、基本的な関わり方のスタンスは同じだと考えている。
(浅香)
就職活動においては、「自分を知る」、「企業を知る」そして「両者の接点を見出すこと」の大切さは、これまでもこれからも変わらないと考えている。
これまでと変わってくる部分としては、大学側の環境。コロナの影響で職員の勤務体制減らしているため、障害学生だけを手厚くサポートすることが難しく、今までと比べると支援が手薄になりがちである。障害学生は支援の質も量も必要であるため、そこは悩ましいところ。
また、学生が企業に足を運ぶことが難しい中では、会社の雰囲気や現場の生の情報を得ることが難しく、どうやってそこの情報を得るか?が課題であると捉えている。
障害をいつの段階で確認するかについては、信頼関係が築かれてきた段階で確認するようにしている。
また、どういう就労の仕方をしたいかなども確認できた段階で、外部機関へつなぐ場合もある。これまでは学生相談室を中心につないでいるパターン多かったが、キャリア支援センターとの連携を深めているので、そちらと協力して外部につないでいければと考えている。(村田)
オンラインになったことで、学生と対面で関わっていれば分かることがキャッチアップしにくくなっています。日常の何気ないコミュニケーションが減ってしまい、「困ったら相談してね」という形式的な関わりにならざるを得ない。
皆さんからの質問でも、今の状況になってから一度面談した後の学生のフォローアップが難しくなった、支援部署としてどんなことに気をつけていくべきでしょうか?といったご質問も多いですが、普段どんなことに気をつけていらっしゃるかなどお聞かせください。(藤原)
そこに関しては、まさにどうしようかと考えている段階。これまでと変えた点としては、そこまで問題なく修学できている学生であっても、少しまめにアプローチするようにしている。それでも、どこまで学生の困り感を聞き取れているか、半信半疑なところもあるのが現状。
(浅香)
対面での支援にできる限り近づけられるよう、ZoomなどのWebツールや電話でコミュニケーションを取るようにしている。
学生支援センターでは週1でフォローを入れ、キャリア支援センターでは学生が相談したい時にメールしてもらい、その後スタッフから電話連絡をすることで、緊急時の受け皿は作っている。
学生とのコミュニケーションで実践しているコツとしては、学生のコンディション(特にメンタル面)を整えることを意識している。
選考の日に最大のパフォーマンスを出せるように整えておくことが大事なので、たとえば就寝・起床時間や、日中の過ごし方、授業とのバランスが取れているかなどを確認し、具体的な一日のスケジュール管理からサポートするようにしている。(村田)
オンライン化で起こる制約の中で、学生間のコミュニケーションが絶たれてしまうことは課題であると捉えています。
周囲に話ができる友人、知人がいる学生は問題ないですが、我々が支援している学生は大学の中で孤立してしまっている人も多い。
オンラインでは周りの学生の様子が見えなかったり、情報源も限られてしまうので、例えば京都大学では、修学支援においてオンラインでも参加できるグループプログラムを行い、自分以外の学生の空気を感じられるような機会を残していますが、オンラインでの学生間のコミュニケーションの可能性などについて、何かご意見はありますか?(窪)
いくつかの大学の支援者の方から、学生とのコミュニケーション方法をメールからチャットツールに変えたら、捕捉率が大幅に上がったという話を聴いた。学生へのアプローチ方法によっても変わってくるようだ。
チャットツールのもう一つのメリットとしては、グループを作りやすいこと。チャットで当事者同士の会話を増やしていくことも一つの手段ではないか。(村田)
コロナの影響で、教職員が大学に出て来られなくなり、部署間のコミュニケーションや連携にも課題が発生する場合など、どのような工夫をされているかお聞かせください。(藤原)
情報共有という観点でいうと、コロナ前であれば、先生・学生・私の三者で会って話せばすぐに解決した問題が、今はそういった場を設けにくく、時間かかってしまっている(そもそも先生からメールが返ってこない等)。
ただ、オンライン化したことにより、学生から先生にアクセスする方法を明示して下さいと大学として教員に伝えている。
これまでであれば、授業時でないとコンタクトが取れなかった先生にもつながれる環境ができたことは良かったと思う。
(浅香)
部署間はメール・電話・Zoomなどで適宜連絡を取り合い、部署内はTeamsを使っている。
学生に対しては、Zoom質問会を行っている。学生は対面だとなかなか手が挙がらないが、チャットだとたくさん質問を挙げてくる。オンラインに慣れている世代なので、これはこの状況下におけるメリットなのでは、と感じている。(村田)
障害学生の中には、マルチタスクが苦手であったり、卒業自体が難しい学生もいますが、修学支援と就労支援のバランスをどう取るか、という点についてはどのようにお考えですか?(藤原)
卒業が優先、という学生はいる。そういう学生については、もちろん話し合いをしながらだが、就職は卒業してからということも含めて、その学生のペースに合わせることが大事だと思っている。
また、キャリアデザインルームのキャリアアドバイザーの先生は外部支援機関とのつながりを持っている。就職を目標にしながら、その先のことはキャリアアドバイザーの先生とも相談しつつ、場合によっては卒業後に支援機関につなぐというパターンもある。
(浅香)
修学と就活のバランスは難しく、全く整理がつかなくなっている学生もいる。
就活の時期はある程度決まっており、どのタイミングまでにどんな準備するかが決まっているので、なるべく早い段階から、「自分を知る」「企業を知る」「その接点を考える」ことを始めていけるかがポイント。
遅い段階で相談に来た場合は、その辺りを早めに整理し、コンディションを整えながら、具体的な話し合いをしつつ進めるようにしている。(村田)
オンライン化したことで、学生との相談予約が途切れてしまうケースが気になっているというご意見もあります。学生へのサポートの機会、たとえば、イベントの実施などはどのようにされていますか?(浅香)
サポートがオンラインになったことで、学生本人が相談するタイミングを失い、連絡が途絶えてしまうケースはある。大分間が空いてしまっている学生にはメールでフォローを入れるようにしている。
(村田)
障害学生と企業がお話しできるキャリアセッションや支援機関の方にご協力頂いて就労支援のセミナーをオンラインで継続して行っている。
オンラインだからこそのメリットもある。たとえば、遠方に住む保護者の方や他部署のオブザーブ参加が可能になることや、他の学生が来る場には来たくない学生も参加できることなどは、オンラインならではの良い点だと思う。
もう一つ、オンラインでぜひトライしてみて欲しいのが、企業で働いているロールモデルの存在が見えてくるような取り組み。障害のある社会人がどう働いているか、オンライン化されている職業現場でどう対応しているか、働き方の多様性など、障害学生が就活をする際に必要な情報が得られる機会があるといいのでは、と考えている。