【開催レポート】大学向けウェビナー「障害学生や就活に難しさを抱える学生の就活はこう変わる!」(1)

障害学生や就活に難しさを抱える学生の就活はこう変わる!
 
エンカレッジでは、6月5日(金)に、大学向けウェビナー「障害学生や就活に難しさを抱える学生の就活はこう変わる!~ダイバーシティ就活や障害学生支援の実践から考える~」を開催しました。
新型コロナウィルスの感染拡大により、大学生の就職活動が大きな影響を受けている中で、とりわけ障害学生や就活に困難さを抱える学生は、より一層大きな影響を受けることになると予想されます。
そこで今回、障害学生や就活に難しさのある学生の支援に携わる大学の皆様にご登壇いただき、ウィズコロナ・アフターコロナ時代における就職活動の変化や、大学としてどう対応していくべきか、学内外がどのように連携すべきか、といったテーマで、情報提供と意見交換を行いました。当日は、全国から約80名の大学関係者の皆様が参加され、本テーマに対する関心の高さが伺えました。
この記事では、第一部に行いました、ダイバーシティ就活の取り組み報告についてレポートします。つづく第二部のパネルディスカッション「今、障害学生や就活に難しさを抱える学生の就職支援はどうすべきか」のレポートは、こちらをご覧ください。
また、本ウェビナー当日の動画もご覧いただけます。本記事と併せてご視聴ください。

第一部:ダイバーシティ就活の取り組み報告

第一部の前半は、エンカレッジで取り組んできた、ダイバーシティ就活(2019年8月~2020年2月実施)や、家でも就活オンライン(2020年3月~6月現在)の全体像と成果や課題について、代表取締役の窪 貴志より報告させていただきました。

1)ダイバーシティ就活の取り組み報告~取り組みの全体像及び成果と課題~

(報告者:株式会社エンカレッジ 代表取締役 窪 貴志)
(1)ダイバーシティ就活の狙い
ダイバーシティ就活に取り組んだ背景には、障害者手帳の有無で学生の進路は大きく変わるということがあった。障害のある学生は、一般雇用か?障害者雇用か?の狭間で揺れることが多いため、障害者雇用の支援だけでは不足しているのではないか、という問題意識がスタートだった。
手帳の有無に関わらず参加できる就活を実現したいという思いから、強みも弱みもオープンに、個性を活かして活躍できる「ダイバーシティ就活」の企画を立ち上げるに至った。
(2)ダイバーシティ就活 実施のポイント
ダイバーシティ就活の実践から、学生の就活を支援する上で、以下の3点がポイントになることがわかった。
✅ 準備→機会→振り返りのサイクルを回す
✅ 企業と安心して対話できる機会を提供
✅ 大学等の支援者による伴走サポートと学内外連携

  (支援者の伴走サポートには当社開発のICTツール「Boosterキャリア」を活用することで、参加学生に共通のサポートができた)
(3)ダイバーシティ就活の成果
■学生への影響(学生アンケートより)
・就活へのハードルが下がり、第一歩を踏み出せた
・実戦での成功体験が積めた
・企業と率直に話が出来る機会になった
・自分自身について知る/見つめ直す機会になった
■その後の進路
・イベントで出会った企業に就職
・イベントで気づきがあり、別の進路へ
・福祉サービスを活用
・(前に進められない場合)個別支援
※個別支援では大学の支援者が関わっていることで社会との接点を持ち続けられる。
■支援者が関わる学内外連携の意義
エンカレッジのみが関わる形だと「点の支援」になってしまうところが、大学等の支援者が関わることで、点と点をつなぐ「線の支援」を実現できた。
(4)家でも就活オンラインの取組内容
コロナ禍によって失われた企業との接点や就活の機会を取り戻すことを目的として、21卒の障害学生向けの就活支援企画を2020年3月より実施。オンラインで企業説明会や就活対策講座、就職相談会などを行い、これまでにのべ220名の障害学生が参加した。
(5)家でも就活オンラインの成果と課題
■ダイバーシティ就活と比較しての成果
・オンラインならではの迅速かつ多様な機会提供
・学生の参加のしやすさ
■ダイバーシティ就活と比較しての課題
・社会情勢により採用の機会自体が減少している(採用減、一般雇用の機会減)
・学生が次への一歩を踏み出せない(学生のニーズに合う機会が提供できていない?個別の支援が必要?)
・学生の状況が不明のため、エンカレッジ側でのフォローが難しい (大学の関わり方が限定的)
(6)2つの実践からの学びと今後の論点
■得られた成果
・準備→機会→振り返りのサイクルの有効性
・安心できる機会が学生に与える好影響(企業と学生同じ目線で話ができる)
・大学の支援者が関わることにより線の支援が実現
■課題
・学内/学外だけで取り組むことの限界
(・企業と大学の障害学生の採用へのスタンスの違い)
■社会環境の変化
・コロナ禍による就職活動や企業の採用における変化/失われる機会
・オンライン化による可能性の広がり
■上記を踏まえての今後の論点
・学内外が連携した支援プロセスによる、学生にとっての成果の最大化
・オフライン/オンラインによる学生への機会の最大化
・企業と大学の障害者雇用に対するギャップの解消
第一部の後半は、ダイバーシティ就活に参加した実践報告と学生の現状について、関西大学 学生相談・支援センター コーディネーターの藤原隆宏 氏、成蹊大学 キャリア支援センターの浅香啓 氏にそれぞれご発表いただきました。

2)ダイバーシティ就活に参加して

(登壇者:関西大学 学生相談・支援センター コーディネーター 藤原隆宏 氏)
(1)関西大学のキャリア支援
それぞれのキャンパスにキャリアセンター(分室)が存在する。
メインキャンパスである千里山キャンパスには、理工系の事務室や「キャリアデザインルーム」があるのが特徴。
(2)キャリアセンターと学生相談・支援センターの関係性
キャリアセンターでは就職のサポート、学生相談・支援センターでは大学生活全般の相談窓口や障がいのある学生の修学支援を行っている。
同じ建物内にあり、相互に相談に行きやすい環境。
障害のある学生のサポートは、
・キャリアセンターの障がい学生担当
・キャリアデザインルームのキャリアアドバイザー
・学生相談・支援センターのコーディネーター(藤原氏)
の三者が連携して行っている。
(3)修学支援とキャリア支援のギャップ
学生相談・支援センターで修学支援をしているのは、障害者手帳有りの学生だけではない(診断書や高校からの情報提供書等を根拠に、合理的配慮を提供)
手帳は有しないが、就労において配慮が必要な学生へのサポートが課題となっている。
(4)ダイバーシティ就活に参加して
■参加学生について
理工系の学部で化学物質過敏症のある学生が参加。
大学入試から大学生活においても様々な配慮や環境整備を行ってきた。
修学自体の困難さもあったが、4年次になり卒業が見えてきたことで、就職を考えるようになった。
キャリアセンターや外部機関にも相談に行っていたものの、うまくつながる先が見当たらなかった際に、ダイバーシティ就活の案内があり、参加することになった。
■参加してよかったこと
・学生が就職につながったこと
 →単に就職先が見つかったということに留まらず、企業に学生の能力を正当に評価してもらえる場があった。
・Boosterキャリアによる学生の就活状況、進捗把握
 →学生の日々の動きがわかり、介入の心づもりができた。
・企業と大学関係者との懇談の時間(ダイバーシティ就活のマッチング会にて)
 →企業側に、支援者目線でどこまで環境整備したらいいのかなどを直接伝えることができた。
■ダイバーシティ就活への期待
・手帳は有しないが配慮を必要とする学生
・アルバイトを含め、社会経験の乏しい学生
・どのような配慮をすればいいのかわからない企業
にとってのダイバーシティ就活の意義
→学生にとっては「安心」して就職活動が行える場であり、企業にとっては、「合理的配慮」をイメージできる場になること。

3)ダイバーシティ就活に参加した実践報告と学生の現状

(登壇者:成蹊大学 キャリア支援センター 浅香啓 氏)
(1)成蹊大学における障がい学生対応の体制
学生サポートセンター(障がい学生支援室と学生相談室が連携)は、教務部と連携しての修学サポートを行ってきた。さらに、2019年度よりキャリア支援センターとも部署間で合意し、連携強化を図っている。
(2)ダイバーシティ就活参画の経緯
■障害者手帳はないが、精神・発達障害の特性を持つ学生をどう支援していくかが課題
具体的には、
・面接での困難さ(質問の意図がわからないなど)
・一般/障害枠の検討(本人と保護者で考えが異なる、診断結果を受け止めきれていない場合など)
・障害のオープン/クローズの問題(一般雇用で障害オープンはハードルが高く、最終面接までは進んでも内定に至らないケースが多い)
■企業への新卒採用に関する独自調査
「手帳なしor診断書なしの学生を採用したいか」のスコアに対し、「手帳なしor診断書なしの学生で採用基準に見合う学生がいれば採用したい」のスコアの方が上昇した。

当該学生における一般雇用の可能性もあると考えていた中で、ダイバーシティ就活の案内があり、参画することに。
(3)ダイバーシティ就活参加学生の実践報告
5名の学生が参加し、1名はダイバーシティ就活の参加企業に内定。
(※詳細は当日の動画をご視聴ください)
■内定した学生がうまくいった要因
・本人が持っていた執念(就職したい気持ちが強かった)
・早期から自身に適性のあるIT業界をターゲットに
・IT業界以外も積極的に挑戦(なぜIT業界がいいのかを語ることができた)
・ダイバーシティ就活開催のタイミング
・支援者の粘り強いサポート(たくさんの支援者が一丸となって並走した)
以上、第一部 ダイバーシティ就活の取り組み報告のレポートでした。
第二部のパネルディスカッション「今、障害学生や就活に難しさを抱える学生の就職支援はどうすべきか」では、京都大学学生総合支援センター 障害学生支援ルームの村田淳 氏をファシリテーターにお迎えし、第一部の登壇者3名とのパネルディスカッションを行いました。
第二部のレポートは、こちらをご覧ください。
また、本ウェビナー当日の動画もご覧いただけます。本記事と併せてご視聴ください。