【開催レポート】「コロナ時代の障害者雇用3.0」テレワーク下の労務管理、マネジメント

障害者雇用を行う企業の人事担当者、現場管理者、経営者の方向けに企画した連続ウェビナー「コロナ時代の障害者雇用3.0」。6月15日(月)に「DAY2:雇用管理3.0 テレワーク下のマネジメント」を開催しました!全国から約70名の障害者雇用に携わる皆様にご参加いただきました。
今回は、経済産業省 ダイバーシティ経営企業100選にも選出された、有限会社奥進システム代表取締役の奥脇学様を講師にお迎えして、在宅勤務・テレワーク下での雇用管理、マネジメントについてお話を伺いました。
この記事では、奥進システム様のテレワーク実践事例から、重要なポイントをピックアップしつつまとめています。
▶ どのような考え方をもとにテレワーク下でのマネジメントを行っているのか?
▶ 各事例を踏まえて自分たちが展開するのならば、どのような考え方で、どのようなツールを活用して運用に乗せるか?
といった視点で考えながらお読みいただくといいのではないかと思います。当日参加できなかった方はもちろん、参加された方も振り返り用としてご活用いただければ幸いです。 また、ウェビナー当日の動画も配信しております(奥脇様の講義部分のみ)。視聴をご希望の方は、以下よりお申し込みください!
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1)奥進システムについて

▶ 事業内容

Webシステム開発、HP制作・保守事業をメインに展開している。
そのためか、「その事業内容だからテレワークができているのではないか?」と言われることも多い。
 ↓
IT・Web事業だからテレワークしやすく、他の事業だとやりにくいというわけではなく、当社でも今までに色々と試行錯誤してきている。
テレワークでできることとできないことの整理、業務の切り分けを徹底して行っている。

▶ 会社の特徴

構成員10名のうち、8名が障害のある社員(うち1名は役員)なので、障害者雇用の実践事例として取り上げられることが多い(雇用率はなんと112.5% !?)。
 ↓
これだけを見ると、障害者雇用の推進を目指している会社ではないかと思われることも多いが、当社が目指しているのは、「障害者が働きやすい職場」ではなく「みんなが働きやすい職場」。
みんなが働きやすい職場づくりと同時に、きちんと利益が出せる会社づくりを目指してやっている。その中で、たまたま障害者雇用比率が高くなっているだけ。

2)働きやすい職場にするために

「働きやすいかどうかは、働いている人に聞いて一緒に考える」が職場づくりの基本的な考え方。
 ↓
働きやすいかどうかを感じるのは、そこで働いている人。
会社が本当に働きやすい職場になっているかどうかは、働いている人に聞くのが一番。
聞いた上で、一緒に考えて取り組んでいくことで、みんなが働きやすい職場になる。
①仕組みづくり
会社全体をよくするための共通の仕掛けのこと(就業規則など)。
ある社員にとっての「これがよかった」「これは不便だからやめよう」を、どの社員にも適応できる全社の仕組みに落とし込む。
例)
・30分ルール:仕事でつまづいた時、まず自分で調べるが、30分経っても分からなかったら人に聞く、質問・相談された側は拒否しないというルール。
この部類の質問はこの人に聞く、などが明示されている。
作業に合わせてルールの時間設定も変える。システム開発なら30分ルール、軽作業なら10分ルールなど。
💡 ポイント
・社員が働きにくさをアピールできる仕組みをつくること
 →「聞き出す仕組みづくり」と「気軽に話しやすい風土」
・どうすればいいか?を一緒に考え、解決する姿勢
例)
障害プレゼン
新しく社員が入社した時に、それぞれの社員が自身の障害について伝える日を設けている
 →周囲に自分の特性を知ってもらう機会に
②個別対応
個々の社員に対して、それぞれの必要や希望に応じて、どのように仕組みを活用するかを考える。
例)柔軟な勤務時間を作る
満員電車での通勤が厳しい→始業時間を早め、早く帰宅する
夜の時間帯の方が集中できる→就業時間をずらしてOKとする
💡 ポイント
・その人の障害を理解することではなく、その人自身を理解すること
例)
双極性障害のあるAさん「双極性障害」って何?→わからなくてOK!
 Aさんは〇〇が苦手、△△にはこうして欲しい人→〇〇と△△に対応
・ただし、何でもかんでも認めるのではなく、今の仕組みの中でできる対応を個別に考えるということ。また、どうすればいいか?は会社が考えるのではなく、本人と一緒に考える。

3)テレワークでの留意点・考え方

①労務管理について
テレワークについてよく聞く疑問
・テレワークでもちゃんと働いている?
・ちゃんと成果を上げてくれる?
・仕事をどう切り分ければ良い?
 ↓ 「会社が仕事というものをどういう風に捉えているか?」がポイントになる。
・テレワークはジョブ型雇用が向いていると言われている。当社ではジョブ型雇用に近い面があるが、メンバーシップ雇用の良い面も取り入れて、中間的な労務管理を行っている。(詳細は動画をご参照ください)
・ちゃんと働いているか?は時間ではなく仕事に縛られるもの。与えられた仕事をこなせるのなら、かかる時間は何時間でも構わない。個人の自由裁量でやってもらっている。
②仕事について
いきなりテレワークにすると、在宅で持ち帰れる仕事が半分もない、といったことが起こりやすい。(セキュリティの問題、仕事の見える化が難しいなどの理由により)
 ↓
これには障害者雇用の考え方が参考になる。
・作業分析の徹底
障害者雇用では、作業を分解して「こことここをやってもらう」と業務を定義するのが基本。この考え方はテレワークでも同じ。必要な作業を分解して「こことここはテレワークでも差し支えない」という振り分けを徹底していく。そうすることで、どれだけできたかを見える化、管理しやすくなる。
・コミュニケーション、不安感への対応
テレワークになっても普段とあまり差異なくコミュニケーションがとれる仕組みを作っておく。たとえば、当社では口頭での業務指示を聞き取るのが難しい社員もいるため、普段から業務指示はチャットで行うようにしている。そうすることで、後で指示内容を見返したり、チェックしたりすることができるだけでなく、テレワークになっても支障が出にくい。
・個別対応、聞き出す仕組みづくり
前述の内容を参照。
③経営資源について
当社では、全ての経営資源を以下の3つに切り分けて整理している。
・会社のみで使用する資源(印鑑の押印など。出社しないと使えない資源)
・在宅でも使用する資源(PC、ネットワーク環境など。社員個人で用意するか、会社で用意するか)
・共有する資源(情報が蓄積されているデータベースなど。会社にいても自宅にいてもどこでも同じように使える資源)
 ↓
「どこまでどういう扱いをするものがどこにあるのか」が分かるようになっているので、基本的にはどこにいても経営資源を活用することができる。
💡 奥進システム様の在宅勤務事例
https://www.okushin.co.jp/okushin/remotework/
①勤務規定について
②労務管理について
③職場環境について
④業務遂行、進捗確認について
⑤経営資源、プロジェクト、利益管理について

上記の項目について、より詳しい事例や実際に使われているツールが掲載されています。ぜひご覧ください。

4)SPISを利用したメンタルヘルスマネジメント

・SPISとは(https://www.spis.jp/
精神障害者雇用の配慮のポイントを考え、それをきっかけに配慮できる環境を熟成するため、自社開発したシステム。2012年のあるセミナーで、「精神障がいの人は突然調子を崩したりするので、長期就労は難しい」という同意が多くあったことにショックを受け、当社の取り組みを汎化するために開発したもの。
・メンタルヘルスマネジメントで大事な3つの観点
①セルフケア
②職場内の配慮(ラインケア)
③外部連携
・SPISを活用してできること
①自分の状態を振り返り、理解できる
 →毎日体調を記録しコメントを入力し自分の状態を振り返るため、自己理解が深まる。
②周りの人(上司、同僚など)が状態を把握できるようになる
 →グラフで調子の波が見える化でき、仕事の状況、季節などを考えて長期的な視点で調子の安定を一緒に考えられる。働きにくさを聞き出す仕組みになる。
③職場が離れていてもフォローできる
 →WEBシステムなので、勤務地と社内担当者が離れていても状態がわかる。テレワーク時も有効。
④外部支援者が日常的に介入できる
 →社内で対応に苦慮しても、外部支援者がコメントで介入し対応の仕方が理解できる。外部支援者が関わることにより、社内でのナチュラルサポートの文化が醸成される。

5)質疑応答

奥脇様からのお話の後に、参加者の方からのご質問にお答えする時間を設けました。以下のように、たくさんの方からご質問をいただきました!
 
  • 個別対応では、個人のわがままを認めてしまうことになりませんか?一人だけ、例えば勤務時間や就労条件を緩めたりすると全体の統制が聞かなくなりませんか?また、その際、処遇(賃金)などは、個別に見直しているのですか?

  • 個人の自由裁量、仕事に報酬を払う働き方が成立するのは理想ですが、それで期待値通りに力を発揮できるくらいしっかりと自立した方々でないと難しくないでしょうか?

  • 「進捗管理」の見える化、とても興味あります。今テレワークで社員の仕事管理が弊社の課題でもあるからです。WBSをうまく全員で共有できるような仕組みがあれば教えてほしいです。

  • テレワークの機器(PCなど)は、会社の提供ですか?また、自宅からの通信費や、電気料金などの負担はどうしておられますか?

6)ご参加者の感想(アンケートより一部抜粋)

非常に参考になりました。特に弊社では精神障がい者の方の勤務事例が少ないのですが、作業を分解したり30分ルールを作ったり、業務日報システムや日々のストレスチェックシステムを導入することで、さらに働きやすくなるのではないかと光が見えました。
またこれは障がい者の方に限らず、小さなお子さんがいるために在宅優先となる方など他の社員にも「働きやすい」職場環境づくりとして同じことが言えると思います。人事としてとてもヒントになりました。
障害の有無にかかわらず、今一度「みんなが働きやすい会社」の姿を改めて考え、そして実施する必要があると思えました。
出社時にも「本人に合った、慣れている指示方法」として、隣にいながらチャットで業務指示をするという点が大変勉強になりました。今、急なテレワークの実施で指示を出される側は特にとまどいが大きい状況なので、そのとまどいを減らす工夫がまだまだできると思えました。
「仕組みの作り方は就業規則にそって構築していく」という部分がとても参考になりました。
何かあった際に「なぜそうしたか」という理由をきちんと説明できることは、支援される側も支援する側も納得することができ、その納得感はチームで働いていくうえで大変重要なものだと感じました。
作業の分析の徹底により進捗の見える化が出来ているというお話は、わかっているようで出来ないことも多く、社内の人間が共通の目標と視点を持つことの重要性が良く理解できました。
『成果物の無い、あるいは出にくい仕事を担当する社員や部署に対して、JOB型雇用の考え方をうまく適用できないか、を考えてみたい。そんなきっかけをいただきました。
働きやすい環境は本人とちゃんと話して構築していくというところが非常に共感出来ました。障害を知るのではなく個を知っていく努力というのは、やっているようでどうしても色眼鏡で見てしまう部分があるので、自分の反省点です。
働きやすい職場・・・とても良いですね。障がい者雇用は障がい者にフォーカスして物事を考えがちですが、障がいの有無関係なく「職場のノーマライゼーション」が当たり前のように社員にも浸透していると感じました。
在宅勤務規定の整備がきちんとされており、とても参考になりました。弊社も在宅化が進む中で課題となっていたので、参考にしながら整備して行きたいと思います。

7)次回以降の「コロナ時代の障害者雇用3.0」ご案内

次回は、6月24日(水)に「職域開拓3.0 これからの仕事を創り出す」をテーマに開催いたします。
コロナウィルスの影響により、対面の活動が制限されている中、企業活動も変化せざるを得ません。飲食業や観光業に代表される対面サービスは特に影響が大きいですが、それ以外の業種であっても、障害のある社員の仕事内容などを見直さざるを得ないこともあると思います。また、テレワークや在宅ワークの導入を進めている企業においては、在宅でできる仕事を創り出すことも必要になってきます。
そこで、P&G Japanで新たな職域開拓を推進されている人事部の松下様、障害者雇用における就業のあり方について研究されている関西学院大学の塚田様をお招きし、障害者雇用で新たに仕事を創り出す際の進め方や大事なポイントについて考えていきます。
日時:6/24(水)13:30~15:00
形式:オンラインウェビナー(Zoom)
参加費:無料
定員:100名(※お申込みは開催当日の朝9時まで受付)
対象:
・障害者雇用の仕事内容を検討している人事担当者、責任者
・テレワーク、在宅ワークでの障害者雇用を検討している人事担当者、責任者
・障害者雇用に関わる担当者、責任者 など
※同業他社の方からのご参加はご遠慮いただく場合がございます。予めご了承ください。
講師:
プロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン(P&G Japan)株式会社 人事部 松下結妃 様
関西学院大学 総合支援センター キャンパス自立支援室主任兼就労支援コーディネーター 塚田吉登 様
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また、次回以降の予定は以下の通りです。企業の皆様のご参加をお待ちしております。
DAY4:7月8日(水) 新卒採用3.0 4万人の障害学生の進路を探る
DAY5:7月20日(月) 障害者雇用3.0 コロナ時代に起こる変化とは(慶應義塾大学 中島隆信教授のご登壇が決定!ぜひ詳細をご覧ください)