ASD(自閉スペクトラム症)とは?その特性と学生への対応のポイント

発達障害の障害種別

発達障害の障害種別は、大きくASD系、ADHD系、SLD系の3つに分類されます。
どれか一つの特性がある方もいますが、重なり合った特性を持っている方も多くいます。

🔽 ASD(自閉スペクトラム症)の特徴

・社会性・対人関係の障害
・コミュニケーションの障害
・こだわりの障害
(アスペルガー症候群、自閉症など)

🔽 ADHD(注意欠如・多動性障害)の特徴

・集中できない
・不注意・ミスが多い
・衝動的な行動をとる

🔽 SLD(限局性学習障害)の特徴

読む、書く、計算などが知的発達に比べて著しく難しい
ASD(自閉スペクトラム症)
 
本ページでは、ASD(自閉スペクトラム症)の特性・特徴や、その学生への対応ついて解説します。
その他の発達障害種別、ADHD・SLDについては、以下をご覧ください。

ASD(自閉スペクトラム症)の人ってどんな人?

ASDは自閉スペクトラム症と言い、過去には、広汎性発達障害、アスペルガー症候群などとも言われていました。現在もその名称が使われていることも多いです。 ASDは、社会性(対人関係)・コミュニケーション・想像力の3つに対して苦手さを持つという発達特性をもっており、これを「三つ組みの障害」と呼びます。
学校生活の中では、少人数制の授業やグループワーク、実験やフィールドワークへの参加に苦手さがあり、先生の指示に対して解釈を誤り、突飛な発言や行動が見られることがあります。
先生や友人と上手く人間関係を構築できずに孤立してしまうなどの困難さに直面する学生もいます。
相手の気持ちを想像することの苦手さから、一方的に話し過ぎたり、相手の表情から意図を読み取れず、場にそぐわないことを言ってしまうこともあります。
たとえば、相手が何度も時計をチラチラ確認していて、「何か予定があるのかな?」「会話がつまらないのかな?」などと感じる場面があったとします。
しかし、言語外の意味を想像しにくい特性がある人や、複数のこと(この例では「自分の会話」と「相手の表情・気持ち」)を処理することに苦手さのある人は、それに気づかず自分の話を続けてしまうこともあるのです。
さらに、同時並行の苦手さから、相手の話を聞きながらうなずきやあいづちを打つことができない人も少なくありません。
また、本人なりのこだわりや興味関心に偏りがあることはよく言われています。
たとえば、サークルで1時間のミーティングを予定していたとき、話が白熱すると予定の時間を過ぎることはよくある話です。
しかし、時間にこだわりがあったり、予定の変更が苦手なASDの人は、1時間を過ぎると途端にソワソワし出したり、話し合いが途中のままでも帰ってしまう人がいます。
何か予定があるのか尋ねても「ない」と答えるのですが、ではなぜ帰るのか尋ねると「1時間が経ったから。」と答えます。
ASDの特性を知っている人からすれば「○○さんなりのこだわりがあるのね」と理解できることもありますが、初めて接する人からするとびっくりされることも多いでしょう。
これらを特性の一つとして捉えたり、ミーティングの時間順守を徹底するなどの工夫につなげてもらえればと思います。
ASDの学生は、上記の特性から人間関係等において失敗経験をしてきた人が少なくありません。
そのため、人と関わることに抵抗感を持っていたり、自己肯定感の低さ、いじめなどの経験から二次障害がある学生もいます。
一方で、特性により強みを発揮できることもあります。たとえば、時間や約束をきっちり守ることができる、授業は休むことなく毎回出席できる、タイムキーパーの役割を担ってもらうと非常に高い精度でタイムキープできるなどです。
苦手さや苦しさに対しては工夫や環境で補い、強みをさらに伸ばす関わり方をすることが大切です。

ASD特性がある方の特徴

・暗黙のルールを理解するのが苦手である
・誰かと一緒に行動するのが苦手で、1人が落ち着く
・正直すぎる、素直すぎると言われる
・会話がかみ合わない、または一方的になりがちである
・人の話を聞いて理解するのが苦手である
・専門用語に関心が高く、難しい表現を使いがち
・例えや比喩を理解しづらく、言葉通りに理解してしまう
・相手の気持ちや感情を読み取るのが苦手である
・こだわりが強い(収集物、物を置く位置、作業の進め方など)
・1つのことに集中しすぎてしまう
・ルールに沿った行動が得意である
・臨機応変な対応が苦手である
・同時並行での処理がうまく進められない
・気持ちの切り替えがうまくできないことがある
・全体を把握するのは苦手だが、細かい点には気がつく
※このリストは発達特性や障害の有無を正式に判断するものではありません。自己分析の参考としてお使いください。

ASDの学生への対応のポイント

認める
■本人なりに考えた結論を一蹴しない
・レポートや志望動機、自己PRなどが不完全でも、本人なりに真剣に考えて書いたことを認める。
・突飛な発言があっても、頭ごなしに否定しない。
■本人の興味・関心に合わせたアプローチする
・本人の得意なことや好きなことの話題に触れながら会話をし、信頼関係を築くことができるようにアプローチする。
・強みにフォーカスし、それを伸ばすための本人の成長プロセス(方法や手段)を考える。
■こだわりを活かす/うまく付き合う
<例:時間にこだわりのある人の場合>
・ミーティングではタイムキーバーを任せる。
・教員や職員も時間を守る。
・時間通りのタイムキープを心がける。時間が読めないときは、予めその旨を伝える。
伝える
■一般的な捉え方を「知識として」伝える
・本人の偏った認識や言動を頭ごなしに否定しない。あまりにも一般論とかけ離れている場合は、「こんな考え方(一般的な考え方)もできると思いますが、あなたはどう思いますか?」など、考えるきっかけを投げかける。
■誤解や勘違いをタイムリーに修正する
・言語外の意味を捉えるのが苦手な方は、冗談で言われたことを真剣に捉えてしまい、誤解や勘違いを生むことがあります。誤解が生じたことがわかったときは、タイムリーにそのような意図がなかったことを伝えましょう。
経験する
■経験する機会を増やす
・他者と関わる機会を設ける(ランチミーティングや小規模勉強会など)。
・就労イメージやアルバイト経験のない人は、学内インターンシップなどを実施する。
■適切な行動をそれぞれの場面で覚える行動のレバートリーを増やす
・先生とは元気に挨拶ができても、忙しくしている職場の人には全く声をかけられない人もいます。学生時代から、できるだけ様々な場面での経験を増やし、行動パターンを増やすことが成長につながります。

ASDのある学生への配慮事例

<苦手さ・困難さ> ➡ <合理的配慮の例>
履修計画が立てられない・詰め込みすぎる ➡ 支援者と一緒に履修計画を立てる
発表ができない、固まってしまう ➡ レポートや発表を録画したもので採点
休講など急な変更に対応できない ➡ 個別に連絡をする
早口な教員の授業が聞き取れない ➡ 録音、ノートテイカーの許可

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