あっこ先生のお悩み相談室Case.1

あっこ先生のお悩み相談室
 
2020年、1月も半ばを過ぎました。今回から、新企画『あっこ先生のお悩み相談室』を担当します、エンカレッジ取締役の高橋 亜希子と申します。
発達障害のある人と関わるようになって、今年で21年になりました。(あら、歳がばれちゃいますね 笑)はじめは、重い知的障害を併せ持つ自閉症の方の生活支援から始まり、その後、いわゆる高機能自閉症/アスペルガータイプの方への支援へと移り、専門的にやりたいと思うようになってから14年程になります。彼らと関わる中で、『社会につながり、社会参加していくことって、むちゃくちゃ大事やわ』と実感し、そこから「働くこと」や「社会参加のために必要な準備」にフォーカスするようになり、就労移行支援に携わっています。
エンカレッジでの就労支援のキーワードの一つに「ご家族との協働」があります。これは、ご家族としっかり情報共有を行い、ご本人を支えることです。今回、新たに、ご家族に向けた情報発信をしていこう!ということになり、本企画を担当することになりました。「そうか、そうしてみよう!」「今の方向で間違ってないんだわ」など、ご家族を”エンカレッジ”できるような発信をしていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願い致します。
それでは、早速、第一弾のお悩みにお答えしていきたいと思います。

お悩み相談Case.1

<お悩み>自閉症スペクトラムのある息子の就職をどうサポートすればいいか?
自閉症スペクトラムの息子について、今後どのようにしていけばよいのか悩んでいます。
息子は、大学を卒業してなんとか就職をしましたが、試用期間の3ヶ月を待ち、解雇を言い渡されました。
本人はショックを受けていましたが、出来ないことも多く怒られたと度々口にしていたので、内心ほっとしているようにも見えました。
今回のことがきっかけとなり、精神科の病院で診断を受けたところ、自閉症スペクトラムの診断を受けました。診断については、本人も理解を示しています。
息子は、就職したいとはいうものの、また失敗したらどうしようと不安があるようです。今後、どんな風にサポートしてやるといいのでしょうか…。
<あっこ先生の回答>
ご本人の「失敗したらどうしよう…」という不安を考えると、ご家族としても心配ですよね。不安で自信のない中で無理に就職活動を続けても、良い結果がなかなか得られなかったり、余計に自信を失ってしまったり、また、どこでもいいからと吟味せずに就職をしても、長く働くには良い環境や仕事内容でなかったりした場合、しんどい状況が続くことにもなりかねません。
今回のお悩みの場合、ご本人も診断を受け、自分の苦手さやできないこと、難しいことを一定理解されているのであれば、(1)苦手な点を具体的に整理すること(2)自分の強みをしっかり発見してから、就職活動に挑むことが良いように思います。
その理由は、
✅ 自分に合った仕事内容を見つける(強みを活かす!)
✅ 安心して働ける環境を探る(どんな環境だと強みが発揮しやすいか?を知っておく)
ことが、お仕事を長く続けられる秘訣になるからです。
では、どうやって上記のことを見つけたり、探ったりするのか?ということになりますね。
これらのことを一人だけでやるのは、正直なところ難しいことが多いです。
発達障害のある方の場合、
✅ 自分を客観視すること(他者の視点を理解しにくい、基準が掴みづらい)
✅ 自分に合った仕事をイメージすること(経験のないことを想像するのが難しい)
✅ やるべきことを、時間と空間に位置付けていくこと(いつ・何をすべきかをスケジュール化し実行する)
ことに困難さがあります。就職活動は、学校での勉強やシステムとは異なり、自分でやるべきことを組み立てていくことや、自分を客観視して、自分の考えや経験を言語化していくことが求められます。
ですので、例えば、エンカレッジの就労移行支援事業もその一つですが、いろいろな経験を積みながら、自分自身への理解を深め、そしてインターンシップ(実習)を経験できるようなところで、一定期間就職に向けての準備を整えてから、再度就職活動をされることをお勧めします。その方が、ご本人にとっても自信がつきますし、自分の強みはここです!とちゃんと根拠を持ってアピールできます。
一方、苦手なことに対しては、自分なりに予防や対策が打つことができ、それを継続して実践していけるようならば、一般雇用での就職活動も可能でしょう。
しかし、苦手なことで困ってしまう状況が、自分ではコントロールすることが難しかったり、陥りやすいことがあったりする場合は、「どんな風に関わってもらえると良いか」を具体化して、周囲の方に理解してもらって働く形(障害者雇用など)もあります。その際は、エンカレッジの就労移行支援の現場でもそうですが、私たち支援者が企業の方と事前に情報共有や調整をすることができます。
ここで、本人がやるべきことは分かったけれど、家族としてはどうすればいいのか?というご疑問が残るかと思います。
一度就職して上手くいかなかったご本人を目の当たりにしているご家族としては、何とかしてやらねば・・・と心配もされることでしょう。
しかし、ここから先は、お子さん自身が、親以外の第三者に相談できる場所、相談できる人を見つけていくことが重要です。なぜなら、社会へ出てからも、いつまでも親が会社に出て行って…となると、社会的な自立につながりません。困っていることやわ分からないことを周囲の人に『相談できる』ことこそが、社会参加への第一歩のように、私は思います。
とはいえ、ご家族が、ご本人にとって一番の理解者であり、応援隊長であることは、他の誰にもできないことです。ですので、まずは、現在つながっている機関(大学や医療機関、ハローワーク、その他)がある方はそちらへ、つながっている機関がない方は、「発達障害のある方をサポートする支援機関」をご参照いただき、まずは、ご本人と一緒に相談へ行ってみることをお勧めします。
まだまだ、十分なしくみとは言い難いかもしれませんが、どうかご家族だけで抱え込まないようにしてください。
支援機関が充実している地域、逆に少ない地域もあり、差があることは事実ですが、お母さん・お父さんのお話やお悩みを聴いてくださるところや人は必ずいます。アクセスするのに勇気がいるかもしれませんが、きっと誰かに相談することで、次の一歩が開けてくるはずです。

新企画「あっこ先生のお悩み相談室」はいかがでしたか?
この企画では、読者の皆さまからのお悩み・ご相談を募集します!発達障害のあるお子さんの特性について、就職や転職、障害者雇用のこと、生活スキルや余暇の過ごし方についてなど、何でもOKです。
ご家族の皆さまからいただいたお悩みに、あっこ先生がお答えしていきますので、どしどしお寄せください◎
宛先:mailmagazine@en-c.jp(メルマガ担当 宛)
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