【開催レポート】「コロナ時代の障害者雇用3.0」テレワーク、在宅勤務下のメンタルケア

障害者雇用を行う企業の人事担当者、現場管理者、経営者の方を対象に企画した連続ウェビナー「コロナ時代の障害者雇用3.0」、5月29日(金)に「DAY1:メンタルヘルス3.0 在宅勤務下の社員サポート」を開催しました!関東・関西を中心に約60名の方々にご参加いただきました。
今回は、講師に精神科医・産業医の種市摂子 先生(Ridente産業医事務所 代表、東京大学 大学院教育学研究科 特任助教、たわらクリニック東京 医師)をお迎えして、在宅勤務・テレワーク下での社員のメンタルケアについてお話を伺いました。
この記事では、当日の内容から特に重要と思われるところをピックアップしてみました。当日参加できなかった方はもちろん、参加された方も振り返り用としてご活用いただければ幸いです。
また、ウェビナー当日の動画を配信しております(種市先生の講義部分のみ)。視聴をご希望の方は、以下よりお申し込みください。
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テレワークとメンタルヘルス~不調の予防のために~

▶ コロナ禍で起きている3つの仕事の変化

(1)時間:通勤時間がなくなった→仕事、睡眠、勉強、趣味、家族や友人などとの時間が増えた
(2)空間:働く場所が職場→自宅もしくは職場以外の場所(自宅で仕事ができない人の場合)になった
(3)対人関係:対面でのコミュニケーション中心→オンラインでのコミュニケーション中心になった
※コロナ以前もテレワーク、在宅勤務を行っている企業はあったが、コロナの影響でテレワーク、在宅勤務に移行する動きが急激に進んだ。
※テレワーク導入により生産性がアップした企業もあれば、逆に生産性が低下した企業もある。

▶ テレワークになったことで起こっている課題

【一般社員の場合】
  • 仕事とプライベートの切り替えができない
  • 職場の人とコミュニケーションがとりづらい(上司や同僚との接点や話す時間が減少している、画面越しだと熱量や空気感が伝わらない、相談したい時に人がいないなど)
  • 運動不足による、身体疾患(糖尿病など)、不眠、メンタル不調なども
  • 過食、アルコール量の増加
  • 仕事上の対人関係の問題(人事異動、配置転換などによる些細な変化で調子を崩す方もいる)
  • 家庭上の人間関係の問題(家族と過ごす時間が増えたことにより関係性が悪くなるなど)
  • コロナの影響により、先が見えない不安
  • 特に新入社員の場合、組織への帰属意識に影響あり
【障害など配慮中の社員の場合】
上記一般社員の課題に加えて・・・
  • 睡眠障害・リズムの乱れ(昼夜逆転など)
  • 通院・服薬の中断
  • ゲーム依存・アルコール依存
  • 変化への対応困難で症状悪化
  • 仕事スキルの不足・孤立により生産性が低下
  • 本人に症状への自覚・自己理解が乏しい場合がある
  • 家族との対人関係の悪化
※本人の自己管理力に左右される面も大きい。業務面だけでなく、生活面も含めてケアする必要性が出てくる場合も。
※一方で、対人関係のストレスが減り、心身好調になる人もいる。

▶ これらの課題にどう対処するか?

メンタルヘルスのためには、
1)予防(課題が起こらないようにする)と、
2)早期対応(課題が起こってしまった時に早期に対処する)
という2つの観点が大事。
1)予防
  • 正しい知識のインプット:行政、福祉保健局、産業ストレス学会などのHP、動画、書籍など
  • 軽い運動(モーニングストレッチなど)
  • 職場の人の声かけ、つながりの強化
  • 様々なコミュニティの活用(オンライン断酒会など、オンライン上でのコミュニティも増えてきている)
  • 産業保健スタッフの活用
⬇⬇⬇
「職場の人の声かけ、つながりの強化」は特に大事なポイント。
人事担当者や産業保健スタッフなどが、本人と顔が見える関係性を作ることが大切。→相談しやすい状態を作る。
2)早期発見
  • 職場の人との面談
  • 産業保健スタッフの活用
  • カウンセリングの受診
  • 遠隔医療相談
  • 遠隔診療
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何か不調が確認された際に確認しておきたいこと
・眠れているか
・通院・服薬はできているか
・同居者はいるか
・家族との関係はどうか
・話ができる人はいるか など

コロナ禍、テレワーク下の不安のコントロール

📍 コロナ禍、テレワーク下で起こる不安
・周囲に感染させてしまうのではないか?
・自分が感染してしまうのではないか?
・年単位で今の状態が続くのだろうか?
・仕事を続けられるのだろうか?
・自分は必要とされているのだろうか?
📍 不安の方程式
不安 = 驚異 / 資源
驚異とは、健康・お金・所属・仕事の安定・人とのつながりなど、今まであったものが無くなってしまうかもしれないという喪失への不安。
資源とは、健康・体力、お金、人とのつながり、情報・知識、仕事スキル・ICTスキル、得意・強み・専門性など。
驚異はコントロールできないことなので、コントロールできる資源を増やすことがポイント。個人の資源の中でも特に大事なのが、人とのつながり。
📍 対人関係のプロセス
人間関係をつくる上では、以下のステップを踏んで徐々に階段を昇っていくことが大切。
対人関係のプロセス
 
※心理的安全性:安心して話せる、本音が言える関係性をつくる(ラポールの形成)
※信頼と繋がり:ヒューマンな部分(本人の性格、人間性や周囲との関係)とタスク(仕事の遂行能力や適性な業務)の両方が噛み合うとうまくいく

質疑応答

種市先生からのお話の後に、参加者の方からのご質問にお答えする時間を設けました。以下のように、たくさんの方からご質問をいただきました!
 
  • 現状、在宅を前提とした障害者雇用は進んでいますか?

  • 障害のある方の場合、在宅ワークの方が定着率が良いとも聞きますが、職場への出勤と在宅勤務を半々にする就労の可能性はありますか?

  • テレワークによって生産性上がった企業は、どんな業種が多いですか?

  • 社員が相談したい時にサポートがないことが課題というお話がありましたが、テレワーク下でもすぐにサポートができる体制づくりのヒントがあれば教えてください。

  • 自宅でオンラインの環境が整っていない場合、オンライン以外の方法で孤立を和らげたり、相談しやすい環境をつくる方法はありますか?

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ご参加者の感想(アンケートより一部抜粋)

  • テレワークをするのであれば、明確な指示、相談体系が分かるようにしておくことが安心につながることが分かりました。特に新入社員には配慮をしていきます。
  • テレワーク下での障がい者の方の精神安定をいかに図るか、また不調時にどう対応するかを課題として持っていましたが、心理的安全性の話やコミュニケーションの話など参考になりました。
  • テレワークを活用した一般従業員も含めたサポートのヒントを考えるキッカケになった。
  • テレワークでのメンタルヘルス予防策として、モーニングストレッチ、職場の人の声掛け(眠れているか、通院服薬、同居人、家族関係、話ができる人がいるかを確認し、繋がる工夫が必要)が有効である点。具体策を挙げていただいたため、理解しやすかったです(実際に対応するイメージがわきました)。
  • 障害者の方は勿論、他の社員の在宅勤務における問題点(例えば睡眠不足やメンタルの不調など)のケアも大切だと改めて感じました。企業と働く社員とのつながりや、本音が言える関係性作りもより必要だと感じました。
  • 時代に合った新しい働き方の紹介を先生のご経験を通じてお話しいただき、勉強になりました。現在はイレギュラー対応として一部の職種で在宅勤務を実施しておりますが、今後社内のテレワークの体制整備に参考になる内容でした。

次回以降の「コロナ時代の障害者雇用3.0」のご案内

次回は、6月15日(月)に「雇用管理3.0 テレワーク下のマネジメント」をテーマに開催いたします。
コロナウィルスの感染拡大をきっかけに、社員の働き方をテレワークに切り替える企業が増えてきました。この流れは障害者雇用とて例外ではありません。しかしながら、障害者雇用におけるテレワークを実践したり、ノウハウを持っている企業はまだまだ少ないのが現状です。
そこで、コロナ禍以前から、障害者雇用におけるテレワークを推し進めてこられた有限会社奥進システムの奥脇社長をお招きし、職場環境の整備、労務管理、業務遂行管理といったマネジメントの視点から実践事例をお話しいただきます。また、奥進システムの実践をベースにした就労定着支援システムSPISのテレワークへの活用についても考えます。
日時:6月15日(月)13:30~14:30
形式:オンラインウェビナー(Zoom)
参加費:無料
定員:100名
対象:
・障害のある社員の雇用管理、マネジメントに関わる担当者、管理者
・在宅勤務やテレワークでの障害者雇用を検討している人事担当者
・障害者雇用に関わる担当者、管理者 など
※同業他社の方からのご参加はご遠慮いただく場合がございます。予めご了承ください。
講師:
有限会社奥進システム 代表取締役 奥脇 学 様
NPO法人大阪障害者雇用支援ネットワーク 代表理事
公益社団法人全国重度障害者雇用事業所協会 常務理事
社会福祉法人きくのか福祉会 理事
NPO法人HIKARI 理事
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※お申込みは開催当日の朝9時まで受付
また、次回以降の予定は以下の通りです。企業の皆様のご参加をお待ちしております。
DAY3:6月24日(水)職域開拓3.0 これからの仕事を創り出す
DAY4:7月8日(水) 新卒採用3.0 4万人の障害学生の進路を探る
DAY5:7月20日(月) 障害者雇用3.0 コロナ時代に起こる変化とは(慶應義塾大学 中島隆信教授のご登壇が決定!ぜひ詳細をご覧ください!)