コロナウイルスが障害者雇用に与える影響について考える

昨今、世間ではコロナウイルス一色になっています。様々な影響を受け、不安な日々を過ごしておられる方も多いと思います。長期戦になるかもしれませんので、心身共に健康にはお気をつけください。
当社でも、先週から就労移行支援サービスを在宅に切り替え、スタッフも在宅勤務しています。
もちろん初めての経験なので、色々と慣れないことも多いですが、ご利用者、スタッフのおかげで大きなトラブルなく、在宅に移行できていて、本当に皆さんに感謝しています。
さて、そんな状況の中ですが、気になるのは、今後、このコロナウィルスが障害者雇用に与える影響です。私たちが知る限りでも、少なくない企業が採用の凍結や、採用予定人数の削減を行うケースが出てきています。
とはいえ、あくまで肌感覚ですので、過去のデータから、どのような影響が発生する可能性があるのか、見ておきたいと思います。
まず1つ目のグラフは障害者雇用人数の推移です。大きくみると右肩上がりになっていて、リーマンショックや東日本大震災の影響もそんなには感じられません。
障害者雇用人数の推移
 
次のグラフは、少し切り口を変え、障害者雇用人数が前年比でどれだけ増えたか、減ったかを増減グラフとしてあらわしたものです。グラフを見て頂くと、雇用数が全く増えていなかったり、前年比で落ち込んでいる年があることが見て取れます。
障害者雇用人数の前年比増減
 
ここに、社会的な出来事を重ねてみると、就職氷河期、リーマンショック、東日本大震災の影響により、障害者雇用が落ち込んでいることが分かります。
1)就職氷河期→94年~03年までの10年間
2)リーマンショック→09年~10年の2年間
3)東日本大震災→12年の1年間
改めて、就職氷河期の影響の大きさを感じるグラフですね。
今回のコロナウイルスの影響の大きさ、そしてどこまで長期間にわたるかは今のところ分かりませんが、巷ではリーマンショック以上との声も聞こえてきます。場合によっては、数年間は厳しい時期が長く続くことも予想されます。
当面は、採用数が減ることになるだろうと予測していますが、それ以外に、起こり得る3つの変化について考えておきたいと思います。

産業構造の変化

緊急事態宣言により外出が制限されることで、私たちの活動も変わらざるを得ません。その中で、変化の影響が大きい業界として、飲食業や観光業のように対面でのサービスを基本とする業界が挙げられます。これらの業界では、コロナが収束するまでは厳しい障害者雇用の状況が続くでしょう。
一方で、オンラインでの新たなサービスも生まれつつあります。オンライン教育、インターネット販売、作業の機械化サービスなど、チャンスが発生する業界もあるでしょう。

働き方の変化

私たちの働き方も変わらざるを得ません。電車に乗ってオフィスまで通勤するのではなく、自宅からパソコンやインターネットに接続して仕事をする人たちも増えていきます。それに伴い、仕事の進め方、コミュニケーションの取り方が変化します。

就職活動/採用基準の変化

合同企業説明会などの対面型の採用イベントは当面大きく数を減らし、オンラインでの出会いの場づくり、面接が一気に進むでしょう。
特に障害者雇用においては、民間企業やハローワークが主催する合同企業説明会は、企業と出会う大きな選択肢です。これらがなくなることによって、障害者と企業が出会う機会が大きく減ってしまいます。また障害者雇用の採用として、実習が大きなウエイトを占めます。
ですが、企業の担当が在宅勤務をしていて対応できなかったり、会社に外部の人が入ることが禁じられているケースもあります。どんな採用方法の変化が発生するのか、注意深く見ていく必要があるでしょう。
このような状況に対して、就職を希望する障害のある方は不安を感じてることと思いますし、企業側もどう取り組んでいくべきかについて、迷っているかもしれません。 ネガティブなことだけではなく、この機会をチャンスと捉えるとしたら、どんなことがありそうか考えてみました。

【1】新たな職域開拓

会社全体として、事業内容や業務内容が大きく変わる可能性があります。
障害者雇用においても、従来雇用が生まれていた業種や職種にとどまらない、新しい形の雇用も生まれていく可能性があるのではないかと思います。

【2】障害者のニーズに応じた、働き方や働く場所の多様化

会社全体としてリモートワークが当たり前になれば、障害者雇用においてもリモートワークが一気に進む可能性があります。
通勤面の不安などで会社に出勤に課題があった障害者にとって、リモートワークで安定して仕事が出来ることで、働きやすくなるかもしれません。

【3】採用方法、採用基準の見直しによる新たな活躍人材の発掘

今までは、障害の影響により、頻繁に遠方まで出向けなかった障害学生もいたかもしれません。それがWebでの採用になることでになることで、企業にアクセスしやすくなる可能性があります。
また、従来はコミュニケーション重視の採用だったのが、リモートワークであれば、業務スキルとチャットで質問が出来れば、業務が行えるようになります。そうすれば、コミュニケーションに苦手意識や不安のある障害学生にとって新たなチャンスが生まれるかもしれません。
コロナウイルスの影響はいつまで続くか分かりませんので、皆さんも不安が大きいと思います。その中でも、アフターコロナを見据えて、この機会をどうポジティブなものに変えていくのか、といった視点を持つのも、必要なことかもしれません。
早く世界全体が落ち着きを取り戻し、平穏な日々が来ることを心より願います。
 

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以下は今後開催予定のウェビナーです。
DAY1:5月29日(金)メンタルケア3.0 在宅勤務下の社員サポート
DAY2:6月15日(月)雇用管理3.0 テレワーク下のマネジメント
DAY3:6月24日(水)職域開拓3.0 これからの仕事を創り出す
DAY4:7月8日(水)新卒採用3.0 4万人の障害学生の進路を探る
DAY5:障害者雇用3.0 コロナ時代に起こる変化とは
社長の独り言