🔶 プログラム
13:00 | 開会の挨拶 |
13:05 | 「家でも就活オンライン カレッジ」概要説明 |
13:25 |
「家でも就活オンライン カレッジ」への思い
京都大学 学生総合支援機構 准教授/ DRC(障害学生支援部門) チーフコーディネーター 村田淳 氏
株式会社マイナビパートナーズ 代表取締役社長 藤本雄 氏
ソニーピープルソリューションズ株式会社 DE&I推進室 室長 森慎吾 氏
株式会社エンカレッジ 窪
|
13:55 | 登壇者によるパネルディスカッション |
14:25 | 閉会の挨拶・終了 |
エンカレッジでは2023年6月より障害のある学生のためのキャリア教育プラットフォーム事業「家でも就活オンライン カレッジ」を開始し、6月22日(木)にオンラインにてキックオフイベントを開催しました。今回のイベントには大学関係者、企業より100名以上の方にご参加いただきました。登壇者によるパネルディスカッションでは、チャットも含め、企業・大学が垣根を越えて障害者支援・雇用・就活のあり方など意見交換がなされました。当日の様子レポートいたします。
「家でも就活オンライン カレッジ」概要説明
「家でも就活オンライン カレッジ」とは?
「家でも就活オンライン カレッジ」は「全国の障害のある学生のためのキャリア教育プラットフォーム」です。全国の大学および企業が横断的に参画、協働することで、十分なキャリア教育を受けられていない障害のある学生に、機会を提供していく日本で初めての試みで、京都大学など30大学が初期参画するほか、株式会社マイナビパートナーズをパートナーとして、トヨタ自動車など6企業にご協賛、ご協力をいただいています。
株式会社エンカレッジ 代表取締役 窪より「家でも就活オンライン カレッジ」(以下、家カレ)の概要を説明。
障害学生の就職活動を支援する中で、下記の課題が見えてきた。
1)障害学生は就職に向けた準備が整わず、一般の学生に比べ就職率が低い
2)大学における修学支援は進んでいる一方、キャリアや就職活動支援まで手が回っていない
3)障害学生は増え続けているが、学内の支援リソースは増えづらい現状
4)障害者雇用や採用プロセスの多様化による企業と学生のマッチングの複雑化
2)大学における修学支援は進んでいる一方、キャリアや就職活動支援まで手が回っていない
3)障害学生は増え続けているが、学内の支援リソースは増えづらい現状
4)障害者雇用や採用プロセスの多様化による企業と学生のマッチングの複雑化
これらの課題解決のため、家カレが目指すものは、1)大学が横断的に連携し、2)企業が企画に協力し、3)障害のある学生が安心して参加できる体験を提供する「全国の障害のある学生のためのキャリア教育プラットフォーム」である。強調したいのは「就職活動」ではなく、低学年時からの「キャリア教育」という点。
これまでの就職活動は「大学→インターンシップ→就職活動」というのが大きな流れだったが、家カレでは大学生活と就職活動の間を掘り下げ、低学年時から就職活動・働くための土台づくりの機会を提供することで、障害学生の就労準備度を高めることに重点を置きたいと考えている。
これまでの就職活動は「大学→インターンシップ→就職活動」というのが大きな流れだったが、家カレでは大学生活と就職活動の間を掘り下げ、低学年時から就職活動・働くための土台づくりの機会を提供することで、障害学生の就労準備度を高めることに重点を置きたいと考えている。
🟠 家カレの全体像
また、障害学生のキャリア教育の取り組みは、マンパワー・ノウハウ不足、そもそもの1校当たりの障害学生の人数が少ないなどの問題があり、各大学が単独で行うのは難しい。
そこで複数の大学が参画・連携し、さらに企業が協力して学生に必要な社会体験を提供するという形をつくることで、障害学生のキャリア教育の充実を目指したい。
そこで複数の大学が参画・連携し、さらに企業が協力して学生に必要な社会体験を提供するという形をつくることで、障害学生のキャリア教育の充実を目指したい。
学生に提供する機会としては、自分のことを振り返るプログラム、障害者雇用を知るセミナー、企業との座談会など、学生の「働く未来」を後押しするようなコンテンツを企画している。
大学支援者・家族向けの企画も検討中。今後、この取り組みを全国の大学に広げていくため、興味のある方は参画をお願いしたい。
大学支援者・家族向けの企画も検討中。今後、この取り組みを全国の大学に広げていくため、興味のある方は参画をお願いしたい。
「家でも就活オンライン カレッジ」への思い
京都大学 学生総合支援機構 准教授/ DRC(障害学生支援部門) チーフコーディネーター 村田淳 氏
村田氏は京都大学における障害学生支援に15年以上勤務し、障害学生の修学支援、社会移行支援(キャリア教育など)を行ってきた。そのなかで、エントリーシートの書き方や面接対策のような就職活動の支援だけをしても本質的な支援にならないと感じることが多くあった。
早い時期から、本人や本人の未来を考えたキャリア教育を行うことで、極端に言うと「就職活動支援をしなくても済む」ようになることが理想的なキャリア教育ではないか、という考えのもと京都大学では社会へ移行する「準備期」に注目したプログラムをつくってきた。就職のことを考えると、いかにも就職活動期が重要と思われるかもしれないが、そこに向かうまでのプロセスが重要と考えている。
早い時期から、本人や本人の未来を考えたキャリア教育を行うことで、極端に言うと「就職活動支援をしなくても済む」ようになることが理想的なキャリア教育ではないか、という考えのもと京都大学では社会へ移行する「準備期」に注目したプログラムをつくってきた。就職のことを考えると、いかにも就職活動期が重要と思われるかもしれないが、そこに向かうまでのプロセスが重要と考えている。
社会移行の全体像
[引用]京都大学 学生総合支援機構 DRC(障害学生支援部門)HP社会移行
https://www.assdr.kyoto-u.ac.jp/drc/resource-and-program/socialtransition/
https://www.assdr.kyoto-u.ac.jp/drc/resource-and-program/socialtransition/
多くの大学は修学支援も始まったばかりで課題が少なくない。また、学生自身も学生生活を送るだけで精一杯という学生がいるのも現状。
キャリア教育は後回しになっており、取り組もうとしても情報不足、機会不足に直面する。また、就活も多様化し、学生一人ひとりの状況が異なるなかで、学生と企業のマッチングを一大学で行うことに限界を感じる。
そもそもの論点として、障害のある大学生が増えているという点と、日本の社会状況とのミスマッチがある。既存の障害者雇用にはいろんなリソースがあり、企業も法定雇用率のためにも雇用を進めたいと考えているにもかかわらず、障害学生の就職率は滞っている。それは、既存の障害者雇用の枠組みと高等教育で学んでいる学生の実態がミスマッチを起こしているということである。
採用したい企業はある、就職したい人もいる、けれども実際はうまくいっていないということは、双方がテーマにしていることが異なっているということ。
新たな障害者雇用の発想や考え方をもう一段階次に進め、選択肢を増やしていくべきなのではないか、その象徴的な層が学生だと思う。そして、それに対して各大学は企業とつながって学生のためにリソースを増やすことが課題になるわけだが、一大学で取り組むのは難しい。マッチングの機会を創出しようと思うと母集団を形成する必要がある。双方にとってたくさんの選択肢がないとうかくいかず、その選択肢を生み出すためには母集団を全体で共有していく必要がある。自分たちの大学だけではないところでプロジェクトが進み、母集団が広がることで、自分たちの大学の学生にも間接的に選択肢が増えてくる。
横断的な取り組むができる家カレで、いろいろな出会いが創出されることを期待している。
キャリア教育は後回しになっており、取り組もうとしても情報不足、機会不足に直面する。また、就活も多様化し、学生一人ひとりの状況が異なるなかで、学生と企業のマッチングを一大学で行うことに限界を感じる。
そもそもの論点として、障害のある大学生が増えているという点と、日本の社会状況とのミスマッチがある。既存の障害者雇用にはいろんなリソースがあり、企業も法定雇用率のためにも雇用を進めたいと考えているにもかかわらず、障害学生の就職率は滞っている。それは、既存の障害者雇用の枠組みと高等教育で学んでいる学生の実態がミスマッチを起こしているということである。
採用したい企業はある、就職したい人もいる、けれども実際はうまくいっていないということは、双方がテーマにしていることが異なっているということ。
新たな障害者雇用の発想や考え方をもう一段階次に進め、選択肢を増やしていくべきなのではないか、その象徴的な層が学生だと思う。そして、それに対して各大学は企業とつながって学生のためにリソースを増やすことが課題になるわけだが、一大学で取り組むのは難しい。マッチングの機会を創出しようと思うと母集団を形成する必要がある。双方にとってたくさんの選択肢がないとうかくいかず、その選択肢を生み出すためには母集団を全体で共有していく必要がある。自分たちの大学だけではないところでプロジェクトが進み、母集団が広がることで、自分たちの大学の学生にも間接的に選択肢が増えてくる。
横断的な取り組むができる家カレで、いろいろな出会いが創出されることを期待している。
「家でも就活オンライン カレッジ」への思い
株式会社マイナビパートナーズ 代表取締役社長 藤本雄 氏
藤本氏は株式会社マイナビの採用責任者を務めた後、特例子会社である株式会社マイナビパートナーズ代表取締役社長に就任。
マイナビパートナーズは、障害者の雇用企業であり、学生の新卒採用も行っている。また、障害者の人材紹介事業のなかで新卒学生のサポートも行っている。さらに、親会社の株式会社マイナビが全国の大学キャリアセンターとの接点がある関係で、大学における障害学生への支援についての相談が多く寄せられる。この3つの側面から学生、企業、大学の橋渡しになれるのではと考えている。
今回家カレに参画する背景となったのは下記4点の課題認識である。
1)障害のある学生の就労準備性が十分ではない
学生は学生生活を送るだけで精一杯で、健常の学生に比べてアルバイトやインターンシップの機会も少なく、自分のことをよく知らない、説明できない状態で社会に出ないといけないタイミングがきてしまう。
2)大学は障害学生のサポートにリソースを避けない
大学も修学サポートで手がいっぱいである。障害のある学生に必要なサポートを知らないという大学も少なくない。
3)企業の受け入れ準備性も十分ではない
できれば障害者雇用はしたくない、精神・発達はよくわからないという考えは根強く、中長期で障害者雇用を考えられていない企業が多い。企業は法定雇用率から障害者を採用する必要に迫られながらも、これからの主役となる精神・発達の方についてはよく知らないのが現状。
4)企業と大学の相互理解が進んでいない
企業はどのような準備を済ませた学生を採用したいのか大学に伝えられておらず、一方の大学も企業に対して、どのような受け入れ準備をしてほしいのか伝えられていない。障害者と働くということをそもそも双方が理解しておらず、「知らない」という理由でなにを伝えればよいのかもわからない状態ではないかと思う。
家カレを通じて学生は自分自身のことを、企業と大学は障害のある学生を知ることで相互理解が深まればと思っている。
家カレを通じて学生は自分自身のことを、企業と大学は障害のある学生を知ることで相互理解が深まればと思っている。
最後に障害者雇用全体については「待ったなしの状態」であると危機感を持っている。
今後、法定雇用率が上がり、おそらく就職率も上がる。しかし、それが本当に障害者にとって「ハッピー」なことなのか冷静に考えないといけない。
大学、支援機関は自分たちの支援の質を上げなくても就職率は上がる。一方企業は雇用率達成のため就労準備性の低い学生を雇用せざるを得ず、「採用コストに見合わない」とネガティブになる。
採用されたことが、会社に還元されないと障害者自身も不幸になるのではないか。大学、支援機関は送り出す人の数が増えても、学生・利用者の就労準備性を上げる努力をする必要がある。そして企業もこれまでなら採用しないであろう層を受け入れ、育成する努力が必要。
法定雇用率のために採用するのではなく、障害者が求められ、戦力として採用される世界をつくらないと本当の意味での障害者の「ハッピー」にはつながらない。
家カレが学生、大学、企業3者満足が増える取り組みになればと思っている。
今後、法定雇用率が上がり、おそらく就職率も上がる。しかし、それが本当に障害者にとって「ハッピー」なことなのか冷静に考えないといけない。
大学、支援機関は自分たちの支援の質を上げなくても就職率は上がる。一方企業は雇用率達成のため就労準備性の低い学生を雇用せざるを得ず、「採用コストに見合わない」とネガティブになる。
採用されたことが、会社に還元されないと障害者自身も不幸になるのではないか。大学、支援機関は送り出す人の数が増えても、学生・利用者の就労準備性を上げる努力をする必要がある。そして企業もこれまでなら採用しないであろう層を受け入れ、育成する努力が必要。
法定雇用率のために採用するのではなく、障害者が求められ、戦力として採用される世界をつくらないと本当の意味での障害者の「ハッピー」にはつながらない。
家カレが学生、大学、企業3者満足が増える取り組みになればと思っている。
「家でも就活オンライン カレッジ」への思い
ソニーピープルソリューションズ株式会社 DE&I推進室 室長 森慎吾 氏
森氏は1998年から障害者雇用に携わっており、大学支援者や障害者と話をするなかで、村田氏、藤本氏と同様の問題を感じてきた。家カレがこれらの問題を解決する仕組みになってほしいという思いで参画を決めた。企業として考えていることを2点あげる。
1)学生が低学年時からキャリアとは、会社とはなにかを知ることが大事
例えば、就職活動のタイミングで企業が障害学生にどのような会社説明をしているか。会社の存在意義、バリュー、障害者雇用理念など、どの企業でも話すと思う。しかし、この説明を聞いただけでは、学生たちは「よくわからない」というのが現状ではないだろうか。学生にとって、それが本当なのか、実際に入ってみたらどうなのかというのはすごく大事なポイントである。そのためには早いうちから企業との接点や企業・社会でのリアルな体験や情報が必要である。低学年時から「会社」を知るということではなく、会社はあくまで「自分のキャリアをスタートさせ、成長させていくステージ」だということ、そして、そのために必要なことを考えておくことがどの学生にとっても大事だと考えている。
2)一人ひとりがよりよいキャリアを考えていけるような動機づけ
「障害があるから……」という障害者は別のくくりで考えてきた社会が、「障害があるから自分にはできない」と障害者自身の自己肯定感を下げることにつながってきたと感じる。そうではなく、自分の努力や考え方に工夫を加えることで、できるかもしれないと考えられる動機づけが必要。
ソニーでは2005年から「キャリア形成」をテーマにしたインターンシップを就活生に提供している。ソニーに入る/入らないではなく、障害者一人ひとりがよりよいキャリアをつくり、どのように生きていくかを考えられるような動機づけをしたいと考えており、実際に参加学生からは「障害があっても自身の力で働けると思えるようになった」という声も多い。
家カレでも早期にそういった動機づけができたら、就活時にも悩まずキャリアがスタートできると思い、参画を決めた。企業全体で考えないといけないところ、大学と連携が必要なところ、いろいろあると思うが、とにかく第1歩踏み出して流れをつくり、全員で盛り上げていきたい。
ソニーでは2005年から「キャリア形成」をテーマにしたインターンシップを就活生に提供している。ソニーに入る/入らないではなく、障害者一人ひとりがよりよいキャリアをつくり、どのように生きていくかを考えられるような動機づけをしたいと考えており、実際に参加学生からは「障害があっても自身の力で働けると思えるようになった」という声も多い。
家カレでも早期にそういった動機づけができたら、就活時にも悩まずキャリアがスタートできると思い、参画を決めた。企業全体で考えないといけないところ、大学と連携が必要なところ、いろいろあると思うが、とにかく第1歩踏み出して流れをつくり、全員で盛り上げていきたい。
登壇者によるパネルディスカッションに続く。