企業の方向け「障害者雇用のはじめ(第1回)」

「障害者雇用に初めて取り組むのですが、どこから手を付けてよいのかが分かりません。どのように進めていけば良いでしょうか?」
と、お問い合わせを頂くことがあります。
企業で障害者雇用に取り組むご担当者は、他の業務と兼務のことも多いため、障害者雇用のことに関心があっても、全てを学ぶには時間が少なすぎるとお感じの方も多いのではないでしょうか。
ここでは障害者雇用に取り組むご担当者が知っておいて頂ければ良いのではないかと思われる情報を数回に分けてお届したいと思います(もう既に知って頂いていることも多いかと思いますが)。
手始めに、企業はなぜ障害者雇用に取り組む必要があるのかを、3つの視点から考えてみたいと思います。

障害者雇用促進法における「雇用義務制度」と「納付金制度」

1つ目に押さえておきたいのが、「障害者雇用促進法」において規定されている、「雇用義務制度」「納付金制度」です。「雇用義務制度」を最初に持ってくることに対して、様々ご意見はあるでしょうが、企業として考えるべき視点であることは確かです。雇用義務を意識しながらも、1人1人の障害者の活躍できる状態をどう作っていくかという、両面で考えていくことが大切になります。

▶ 雇用義務制度

まず、「雇用義務制度」では、事業主の従業員規模に応じて、法定雇用率(障害者雇用率)を満たす障害者の人数を雇用することを義務付けています。
□民間企業(従業員45.5人以上)の法定雇用率は2.2%となっています。
(今後、2021年4月までに2.3%まで引き上げられる計画)
原則として、週30時間以上働く障害者を1人、週20時間以上30時間未満働く障害者を0.5人としてカウントしますが、特例措置として、2018年4月以降、精神障害者に限り、週20時間以上30時間未満働く障害者も1人として数えることになります(雇用開始から3年以内か手帳を取得後3年以内の方。5年間の時限措置)。
公的機関にも法定雇用率が規定されています。詳細は以下をご覧ください。

▶ 納付金制度

次に、「納付金制度」では、法定雇用率を満たしていない企業から納付金を徴収し、障害者を多く雇用している企業に対して調整金や助成金を支給します。
□企業の納付金:法定雇用率に満たない障害者の人数×50,000円/月
(労働者数が101人~200人以下の企業は1人当たり40,000円/月の納付金)。
一方で、常用雇用している労働者数が100人を超える企業で、法定雇用率を超えて障害者を雇用している場合は、雇用率を超えた雇用に際し、27,000円/月・人の障害者雇用調整金が支給されます。その他にも報奨金や調整金があります。詳細は以下をご覧ください。
障害者雇用納付金制度の概要(独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構)
障害者雇用率が法定雇用率より著しく低い企業は行政から指導が入り、雇用率達成に向けた計画を立案が求められることがあります。
計画が進まない場合には、社名が公表される可能性があり、昨今の省庁の雇用率水増し問題にも代表されるように、雇用率を満たさないことが、社会からみたマイナスイメージにつながりかねません。

人材の有効活用

2つ目の視点は、人材の有効活用です。
2019年現在、有効求人倍率は高止まりしており、多くの企業で人材不足が続いています。
今後、日本全体の人口はさらに減少することが確実視されており、人材確保は多くの企業にとっても大きな課題になるでしょう。
人材確保の方法として、高齢者、外国人、女性活躍など多様な人材の活用が取りざたされていますが、その中の1カテゴリとして障害者も候補に挙がっています。 2018年の障害者白書によると、障害者の人口は936万人(身体436万人、知的108万人、精神392万人)です。 働く世代(18~65歳)に絞っても、352万人(身体101万人、知的58万人、精神193万人 ※精神は25歳以上)です。 一方で、企業で働く障害者は約50万人と、働く世代全体の1/7にとどまっており、今後、さらなる障害者の戦力化が期待されています。
障害者社員を含む様々な社員がそれぞれの強みを活かす形の取組が求めれられているのではないでしょうか。

CSRや顧客の視点

3つ目の視点は、CSRや顧客の視点です。
最近はSDGs(持続可能な開発目標)というキーワードが話題になっていますが、その中でも、障害者の働きがいについての項目もあります。
また、2つ目の視点で述べたように、障害者の人口は936万人であり、家族も含めるとその数倍になると思われます。
これだけの割合から考えると、障害者や家族も含めた生きやすい社会、イキイキと活躍できる社会つくりに寄与することは、企業からみても社会的価値創出につながります。
さらに直接の顧客候補として、彼らへのイメージが回りまわって会社の業績にも大きな影響を与える可能性もあります。
以上3つの視点から企業の障害者雇用について考えてみました。
昨今の社会情勢を踏まえると、人材の有効活用や自社の業績といった、自社の事業に直結した障害者雇用の必要性が求められていると言えると思います。

雇用事例から考える、障害者の戦力化

上記で述べたように、あるべき論として企業が障害者雇用に取り組む理由はあるのですが、具体的に企業がどのような狙いを持って障害者雇用に取り組んでいるのか、事例を通して考えてみたいと思います。

▶ 障害者雇用事例1:業務の再構築

消耗品を取り扱う全国チェーン店Aは、全国100カ所以上の店舗を保有しています。
各店舗では、店長が、朝から晩まで気が休まる暇もなく様々な業務に取り組んでいますが、時間外労働も多く、店長に依存した店舗運営がなされていました。
この店長の業務のうち、パソコンを活用した入力業務を、パソコンが得意な障害者が担うことにより、店長の負荷が軽減されるとともに、責任範囲と役割分担が明確になることによって、より整理された店舗運営がなされることになり、店舗運営、働き方の改善のきっかけになっています。

▶ 障害者雇用事例2:人材採用・育成の在りかたの見直し

地域密着型の菓子製造業Bでは、人材育成に頭を悩ませていました。
各店舗や製造現場では数人の正社員と多数のパート社員を中心に運営されていますが、職人気質の職場で、「先輩の後ろ姿をみて覚える」というスタンスで社員育成が行われており、パート社員がなかなか育っていかない、という課題がありました。
また、そもそもパート社員も採用しにくく、このままでは必要な人材を確保し続けられるのか不安もありました。
この状況に対して、まず必要なスタッフの確保面で障害者雇用に目を付けました。
食材の仕込みや後片付けと言ったところでコツコツと取り組むことに強みを持つ障害者を採用し、そして障害者スタッフへの育成方法を標準化しました。
その後、パート社員の育成にも活用できる仕組みとして社内に展開することで、パート社員育成の下地を作っていくことになりました。
以上の事例を通して分かることは、障害者雇用が、業務の再構築や人材の採用・育成といった会社としての重要課題と紐づく形で取り組まれていることです。
そうなると、会社としては本気で取り組むことになりますし、障害者を大事な戦力として考えていくことにつながります。
そして、それが、障害者にとってもモチベーションやスキル向上にもつながり、会社全体として正のサイクルが回りだすことにもつながるのではないかと思います。
長くなりましたので、1回目はここまでにしますが、2回目以降で、障害者雇用の具体的な進め方について考えていきたいと思います。
社長の独り言