発達障害のある方の職域拡大における支援者のスタンス

普段、企業の皆様とお付き合いをする中で「発達障害のある方の職域としてどのようなものがあるか教えて欲しい」と相談を受けることがある。
その時、他社がどのような仕事に取り組んでいるか紹介したり、当社から企業に就職された発達障害者のある方の事例を紹介することがある。
これはこれで意味のあることだとは思うが、一方で、自分でも不十分な対応だと思うことも多い。

発達障害のある方の職域の物足りなさを変えるには

最近、当社とかかわりのある発達障害のある学生や、既に企業で勤務している方、フリーランスとして活躍している方と話をしていて思うのは、既に障害者の職域として確立されている職種(例えば、清掃や一般事務)に対して物足りなさを感じている人がすごく多いという感触がある。
会話の一例を挙げると、以下のような内容だ。

もう少し自分の強みや経験を活かせる仕事は障害者雇用にはないのか?
そこまで仕事を限定されなくても、ちょっとした配慮さえもらえれば、活躍できると思うんだけど・・・
3年経っても仕事内容や給与が一切変わらないので、転職しようかと思う

そういったニーズに応えていこうと思えば、企業に向き合う我々のスタンスも変わっていかないといけない。

『「既にある障害者の仕事や求人」に対して、障害者をマッチングしていくのではなく、現段階では障害者の仕事として確立されていない「新しい職域を作り出す方法」を企業に伝えること』
『障害者雇用ではなく、既に世の中にある一般求人に対して、ちょっとした配慮を加えることで、職場の中で活躍できる状況を増やしていく』

という風にだ。

もう少し言えば、この取り組みは、一般雇用と障害者雇用で「働く場所や業務内容」を完全に分けるのではなく、同じ職場の中で、健常者、障害者が一緒に取り組むことに繋がっていくと思う。
私も、最近はこのようなスタンスで企業支援に取り組んでいるつもりではあるが、そのような視点で雇用を生んでいこうと考えて頂ける企業はまだまだ少数派だ。
(誤解のないように補足すると、取り組みの必要性は理解して頂けるが、それを社内で展開しようとしたときに、様々な軋轢が生まれやすく、社内の合意形成も含めて、慎重にプロセスを構築しないといけない進めていけない、といった回答が多い。ということは、結局、こちらの具体的な提案力不足、という部分も大きいのだが・・・)

私たちが目指す雇用の形や役割を再認識する

そんな中、つい先日、当社から就職した発達障害のある方が勤務する企業に見学に行った際、取組内容に大変感銘を受けた。
そこでは、その発達障害のある方が、その企業ならではのオリジナルの仕事を、分離された環境ではなく、通常の職場に混ざって取り組んでいた。
しかも任された仕事だけではなく、日々の改善まで含めて、その方の特性に合った形で業務として担っていた。
その方が作成した仕事改善ノートは、ひいき目に見なくても宝物のようだった。
彼の話を聞き、日々の仕事への充実感、今後への成長意欲が心に伝わってきた。
そして、周りもそんな彼に期待し、心から応援している様子が感じられ、とても刺激的な時間だった。
おそらく、今後色々と壁もあるかと思うが、自分自身、そして周囲の理解に支えられながら前に進んでいくんだと思う。

ああ、これが私たちが目指す雇用の形の一つだと強く思ったし、ここで挙げたような企業を増やしていくことが我々の役割なんだと再認識した。
そこに気づかせてもらった、企業さんと発達障害のある方に心から感謝した時間でした。

社長の独り言