障害者雇用率水増し問題から考える今後の雇用のカタチ

最近の障害者雇用のトレンドの中で、気になっていることが2つある。
 

公的機関による障害者雇用水増し問題

1つは公的機関による、障害者雇用水増し問題。
これだけ大手メディアで連日のように報道されているので、障害者雇用に関わる人どころか、世の中全般を見渡しても、この問題を知らない人の方が少ないだろう。
これは、障害者手帳を持たず、本来であれば障害者に該当しない社員を障害者として障害者雇用率にカウントしていた、という話だ。 この問題は今なお広がっていて、国から地方公共団体まで、様々な公的機関で水増し問題が発生している。
これだけ広がっていると、確率論から考えて、1担当者が自分自身の判断で勝手に水増しをしていたなど到底信じられないので、公的機関として横並びの慣習になっていたんだと思う。
 

障害者に活躍の場を生み出せない問題

もう一つ気になっているのは、社内で障害者に働いてもらう場を見つけられない企業に対して、社外で場所を提供して、そこで障害者に働いてもらうビジネスだ。
そのビジネスでは、例えば、地方のビニールハウス農園などで障害のある方に働いてもらい、その場所を企業に貸し出す。
企業は、土地の利用料、働く障害者の人件費、管理者の人件費や管理料を支払うことで、障害者雇用を行ったとみなす、といったものだ。
企業から見れば、お金さえ払えば、社内の仕事づくりや雇用管理に頭を悩ませる必要がなく、活用する企業が増えている。このビジネスの是非については色んな意見があると思う。
雇用管理も行わず、働いている人の顔や働きぶりも知らない障害者雇用が本当に障害者雇用と言えるの?
お金で障害者雇用を買っているだけなんじゃないの?
といったネガティブなものから、
とはいっても、地方の障害者にとっては雇用の場所の創出になるから、それはそれでいいんじゃないか。
適切な管理者がいれば、安定した雇用管理が出来るので、本人にとってメリットがあるのではないか。
といったポジティブな意見まで。
個人として思う所はあるが、今回はこのビジネスの良し悪しについて問いたいわけではない。
焦点を当てたいのは、行政の水増し問題とこのビジネスの共通点だ。
結局のところ、双方とも組織内で障害者に活躍の場を生み出せないという共通の原因から発生しているのだと思う。
<公的機関>
組織内で障害者の活躍の場を生み出せないが、雇用率を守る必要があるので、水増しした。
<企業>
社内で障害者の仕事及び雇用管理が難しいので、雇用率を守るために農園などで障害者を雇用する形にした。
水増し問題が悪い、雇用管理をしない雇用の形式が良くない、という風に結果だけみても何か改善するわけでもなく、結局のところ、現在の効率化や多能工化が進んだ行政や企業において、組織内での障害者雇用(や、その他働きづらさを抱えた人たちの雇用)をどうやって生んでいくのか?という命題に向き合わない限りは、解決しない問題だと考えている。
少し話は外れるが、折しも、現在の日本において、子育て中の社員、高齢社員、外国人社員、介護中の社員など、様々な方々の働きやすさをどう実現するか、といったテーマに目が向いている。それぞれ、強みや出来ることはある一方で、苦手なことや配慮が必要なことが発生しやすいというのが共通点だ。
例えば子育て中の社員は、時間的な制約、働く場所の制約を受けやすい。外国人社員はコミュニケーションの課題が発生しやすい、という風にだ。
なので、配慮が必要なのは、障害者だけではない、ということだ。
私たちとしては、障害の有無に関わらず、「強み」に目を向けた採用・活躍支援だけではなく、「配慮事項」も企業に公開して、両面から本人の活躍を実現していく雇用の形を世の中に作っていきたいな、と思っている。
そして、その中にたまたま、障害者もいるという考え方にしていく。
そうすることで、新しい雇用のカタチが生まれ、多様な働き方を実現する風土が社会として実現していく。
現段階では理想を述べているだけに過ぎないが、当社として本気でそのカタチを目指していきたいと思う。
社長の独り言