企業の人に何でも聞ける!?“EIR”とは!

皆さんこんにちは!インターン生の能澤です。
12月18日(水)、キャンパスプラザ京都で行われた、大学関係者とダイバーシティ就活を振り返る会議に参加させていただきました。この記事では、そのレポートを書いていきたいと思います。今回の会議でも、興味深い概念を新たな知識として吸収することができました。では早速、本題に入っていきたいと思います!

ダイバーシティ就活振り返り会議の概要

今回の会議は、主に「11月27日に開催したダイバーシティ就活マッチング会の実施報告と振り返り」「ダイバーシティ就活を踏まえた意見交換」「今後の動き」の三つに関して話し合われました。参加者は、京都大学、京都工芸繊維大学、大阪府立大学、神戸大学、立命館大学、和歌山大学の教職員の方々合わせて9名とエンカレッジのメンバー4名の計13名でした。
マッチング会
 
会議の序盤は、イベント当日の流れなどを振り返りながら、結果報告として、当日選考を希望した学生数や実際にエントリーした学生数、そこから何人がそれぞれどのような選考ステップを進んでいるのかを報告しました。次に、イベントの良かった点と課題をそれぞれ振り返り、みんなで話し合いました。そこでは、よかった点として、
✅ 障害者手帳を持たない学生も参加できる企画が実現した
✅ 具体的に選考が進んでいる学生が数名いる
✅ (企業と学生の交流会の際に)支援者がファシリテーターとして付くという、大学を巻き込む形でイベントを実現できた
などの意見が挙がっていました。当日、ファシリテーターとして参加した支援者の方々も「日頃の支援の場以外での学生の姿を見ることができて、とても勉強になりました」とおっしゃっていました。また、今後の課題としては、「イベントに参加するまでの準備のハードルの高さ」や「当日のイベントの中で、学生の強みをどう見える化するか」「選考が進まなかった学生に対するフォローや外部リソースへの接続」などが挙げられました。
次に、イベント実施を踏まえた意見交換会が行われました。意見交換会では、今後ダイバーシティ就活にどのような可能性を見出せるかなどが主に話し合われました。特に話題に挙がっていたのは「障害者手帳を持っていないが、就活に困難さのある学生」の就活をどのようにサポートしていくかという点でした。今回は、障害者手帳を持たない学生も参加できるイベントでしたが、そこで浮き彫りになってきたのは、「就活の困難さに手帳の有無はあまり関係ないのでは」ということでした。また、障害者手帳を持っていない学生には、就活において参考にできるロールモデルを示しにくいという意見もありました。例えば、障害者手帳を持っている先輩が、「自分には障害があって、就活の場面でこんな苦労があったけど、こう乗り越えた」といったように就活で困ったことを共有すると、障害者手帳を持っている学生であれば、多くの場合、それを自らの就活の参考にしようと考えます。しかし、障害者手帳を持っていない場合は、同じように就活に困難さを抱えているとしても、「自分は障害者ではない」という認識が生まれ、上記のようなケースは自分とは関係ないと思ってしまう学生が多いそうです。ある大学では、「障害者手帳を取得することのメリットをしっかりと伝えるようにしている。そのためか、最終的に手帳を取得する学生が多い」という声も挙がり、他の大学ではどうかといった意見交換がなされました。
意見交換会の後には、今後のダイバーシティ就活やその他の企画に関する計画が共有されました。そこでも「今後も去年の2月に実施していた『みんなでサポート就活』を継続してはどうか」といった意見が出るなど活発な議論がなされました。

“EIR”の可能性

▶ EIRとは?

今回の会議に参加させていただいて、個人的に一番大きな学びとなったのは“EIR”という概念でした。EIRについては、会議の中で意見交換をしている時に、ある大学が障害のある学生を対象に実施している取り組みとして紹介されました。
EIRとは、“Employer In Residence”の頭文字を取ったもので、直訳すると、「住居の中の雇用者」という意味になります。これは、アメリカ発の取り組みで、簡単に表現すると、企業の人が実際に大学(=大学生の「住居」)まで出向いて、学生と一対一で話をするというものです。アメリカのある大学のウェブサイトを見ると、EIRに参加する学生側のメリットとしては、
✅ 企業の人とのネットワーク作り
✅ 面接スキルを伸ばせる
✅ 企業の人から有益なフィードバックをもらえる
などが挙げられていました。また、企業側にもメリットはあり、
✅ 学生に対する企業の知名度を上げることができる
✅ 学内においてその会社の存在感を保つことができる
などが挙げられます。
EIRを障害学生向けに学内での取り組みとして行っている大学では、空いた時間に学生が企業の人とカジュアルに話せる場を提供しているということでした。そこでの会話は採用には全く関係ないので、学生側は説明会のような公の場では聞けないようなことを、気兼ねなく聞くことができます。また、企業側も話題を気にせずに学生と本音で話すことができます。企業側は、障害のある学生とどう接していいのか分からないといった悩みを抱えていることが多いため、カジュアルに話す機会を持つことで、「彼彼女らはこういう感じなのか!」「彼彼女らにはこのような心配事があり、このような配慮を求めているのか!」といったことをリアルに感じることができます。また、実際に参加した企業から意外な発見としてよく挙がるのが、「身体障害のある学生の方が、求める配慮が明確で対応しやすいと思っていたが、実際に話してみると、むしろうちの仕事(職場)だったら発達障害のある学生の方が向いているのかも?」といった認識が生まれることもあるということでした。このように、障害種別は関係なく、個人を見ることでリアルに雇用のマッチングを検討できるのもEIRの魅力です。
EIRとは
 

▶ お互いをより深く知る機会の創出

以上のようなEIRという取り組みの話を聞いて、この取り組みは特に障害や就活に困難さのある求職者にとって、就活を始めるためのスタートダッシュになり得ると感じました。EIRを実施している大学の話では、そもそも学生側も企業側もお互いのことをあまり知らないことが多いということでした。確かに、私が「就活のススメ」のインターン報告会に行った時も感じたことですが、多くの学生が「自分の働いている姿」を想像できていないことが目立ちました。そして、これは発達障害のある学生だけでなく、多くの学生が同じように感じていることだと思います。たとえ、大学生になってアルバイトをしたとしても、それによって将来の自分が働いている姿を具体的に想像できる人は少ないと思います。また、他にも障害や就活に困難さのある学生なら、企業がどのような配慮をしてくれるのかというところも気になる部分だと思います。ただ、そのような話は説明会や面接など就活の場面では、なかなか本音で話せることはありません。
しかし、EIRでは好きなことを企業の人と話すことができます。例えば、「実際に業務としてどんなことをしているのか」や「障害のある人にはどんな配慮があるのか」、「職場に障害のある人はどれくらい働いているのか」など、採用とは一切関係がないからこそ、本当に知りたいことを聞くことができ、企業の人も建前ではなく事実を答えてくれます。それによって学生は、自分が働くイメージをより具体的に持つことができ、「働く」ということに対する漠然とした不安も小さくなっていきます。企業の方も、例えば「発達障害のある学生はコミュニケーションが苦手と聞くけど、実際はどうなのか」「障害のある学生はどういったことで就活を悩んでいるのか」など、オフィシャルな場ではなかなか知ることのできない学生のリアルな姿を知ることができます。
EIRという取り組み
 

最後に

障害や就活に困難さのある学生の就活では、学生も企業もまずお互いを知ることが大切だと思いました。そしてEIRは、それを可能にするものだと思います。特に、障害や困難さのある求職者側が企業と本音で話して、求人に載っているような表面的な情報だけではなく、自分が働く姿を具体的にイメージできるような情報を得ることは、今の就活のシステムではなかなか難しいと思います。それは、現行の就活が「弱みを見せられない就活」のスタイルだからです。しかし、EIRでは採用には全く関係なく企業の人とフランクに話すことができます。EIRを実施している大学では、実際にEIRを通して学生と企業がお互いのことを知ることができた結果、就職まで至ったケースもあるようでした。
エンカレッジが取り組んでいるダイバーシティ就活は、従来の「弱みを見せられない就活」とは異なり、自らの強みだけでなく、苦手さも企業に伝えることができる就活です。このような「個を見る(見せる)」形の就活プロセスの中に、採用関係なしで求職者と企業が建前なく本音で話すことができる機会が存在すれば、障害や困難さを抱える学生はもちろん、その他の学生にとっても自らの「働く」を考える素晴らしいきっかけになると思います。今後、エンカレッジでも、何らかの形でEIRのような「求職者」と「企業」がお互いより深く知り合える機会を創出できれば、「個を見る(見せる)」形の就活がもっと広がっていくのではと思いました。

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