あっこ先生のお悩み相談室Case.7

あっこ先生のお悩み相談室Case.7
 
新緑がきれいな季節となりました。例年より桜の開花が早く、ピンクからグリーンに木々がすっかり移り変わり、新緑がみなぎる生命力を感じますね。
この春、新しい一歩を踏み出された方、そして環境が変わられた方も多いと思います。新年度がスタートしてようやく1ヶ月が経過し、少しずつ慣れてこられた頃でしょうか。
そのような中、今回はこんなお悩みをいただきました。

お悩み相談Case.7

<お悩み>
今年の3月に大学を卒業した息子について相談があります。
本当は去年卒業でしたが、卒業論文ができず1年留年しました。卒論を書くことと、就職活動をすることを同時進行出来ず、この1年は卒論を書くことに重きを置き、就職活動は全然しませんでした。
3歳の時アスペルガー症候群かな?と指摘は受けましたが、特別な支援は受けず大きくなりました。
大学4年生の時、就職活動がうまくいかない、卒論ができないことで荒れに荒れ、心療内科を受診することとなり、去年の10月に自閉症スペクトラムと診断され、障害者手帳を取得しました。
一般枠で就職したらいいのか、障害者枠で就職したらいいのか本人も私たちも悩んでいます。
<あっこ先生の回答>
卒業論文を優先し、まずは卒業することを目指してこの1年頑張ってこられたのですね。無事のご卒業、おめでとうございます。就職後の進路や就活について、今回もお答えしたいと思います。
前回の相談室でも触れましたが、“どのような働き方がいいか=つまり、「一般枠での就職」あるいは「障害者雇用枠での就職か」”ということも大事な選択ですが、その前に、『どんなふうに就活を進めていくか』も、今後の働き方を考える大切な要素になります。

■どんなふうに就活を進めていくか。その判断軸とは?

どちらがいいのか悩んでおられる状況を察すると、双方どちらをとっても、不安や懸念点があるからではないかと思います。どのように就活をしていくかを判断するには、「現状から考える」ことが重要に思います。例えば、
📍 働くイメージが持てない
📍 自分にあった仕事や職種がわからない
📍 アルバイトの経験がない
📍 コミュニケーションが苦手で、不安…
など、悩みが大きく、また複数の困りごとがある場合は、誰かに伴走してもらいながら就活をする方が、相談がしやすく、安心でき、そして正直、効率的です。就職支援の専門機関の方は、正確な情報を持っておられ、就職に関してのノウハウもお持ちです。きっと的確なアドバイスや助言、ふさわしい情報をいただけるでしょう。
一人で行う就活はそれらが得られにくく、自分で情報を探し、キャッチしにいかねがならず、時に間違った情報を受け取ってしまったり、自分の思い込みで認識がずれてしまったりすることもあり得ます。さらに、不安や困りごとを抱えたまま解決せず、なかなか前に進められなくなり、途中で心が折れてしまうかもしれません。しかし、伴走者がいれば、一人でもがき大変な苦労をすることを避けられます。
つまり、上記のような悩みや困りごとがある場合、まずは誰かに伴走してもらいながらの就活の方が安心して進められ、返ってくるメリットも大きいように思います。そのメリットとは、誰かに自分を知ってもらっている状態の方が、客観的に自分を知ることができる機会が多く、結果、自己分析が進みやすくなるというものです。
私たちエンカレッジが運営する就労移行支援事業所も、支援者が伴走しながら就活を進めることができる場所の1つです。就活前の情報収集はもちろんですが、その前にさまざまな経験を積み、他者からのフィードバックも得られ、自分の得意なこと・苦手を知ること、ひいては自己分析や自己理解へとつながりやすくなります。
逆に、アルバイト等の社会経験もあり、ある程度働くイメージが持てていて、自分に適した職種や興味関心が明確であれば、一人で就活をして一般枠でチャレンジできる可能性も高まるでしょう。

■ひとりで就活する場合と、誰かに伴走してもらう就活の違い

下記の図は、就活の基本的な進め方を軸に、ひとりで就活をする場合と、誰かに伴走してもらう就活の違いを整理したものです。
就活の進め方
 
就職活動の準備といっても幅広く、何から手をつけていいかわからない状態に陥りやすいものです。そのような時、伴走者がいると、まず何から取り組むといいのか、どんな経験するといいのかを提案してもらえたり、一緒に考えることができます。
次に、就活は、段取りやスケジュール管理も重要なキーになります。就活は行き当たりばったりではうまく進みません。自分でどんなふうに動いていくかを考えて組み立てていかなくてはいけないです。さらに言うと、就活では複数の企業に応募していくわけですから、複数の企業の採用スケジュールを自分のスケジュールに落とし込んでいくことになります。
ひとりで就活する場合、当然ながらその道のりを自分で組み立て、それに沿って進め、状況に応じて軌道修正をしていくことが必要になります。発達特性のある方にとって、この軌道修正が苦手で難しい場合が多く、つまづく要因となる可能性があります。そんな時、伴走者がいると、軌道修正を手伝ってくれます。
また、エントリーの段階で、障害者雇用で就職すると決めていれば、採用前のステップでインターンシップが経験できたり、支援者が面接に同行することも可能です。

■一般枠と障害者雇用枠での就職の違い

下記の図は、当社でもよく使う「一般雇用」と「障害者雇用」のメリット・デメリットを表したものです。
「一般雇用」と「障害者雇用」のメリット・デメリット
 
🔽 一般雇用
メリットは、当然ではありますが、たくさんの求人がありいろんな分野の中から選ぶことができます。そして、通常の労働条件で雇用され、キャリアアップのチャンスもあるでしょう。デメリットとしては、当たり前として求められる基準が高いので、就職までなかなかたどり着けないかもしれません。職場内でも当然ながら、苦手さへの理解や配慮はない形で働くことになるため、自分なりに工夫して対処をしていくことになります。
🔽 障害者雇用
一方、障害者雇用は、以前に比べると障害者求人も増え、条件も少しずつ良くなってきています。そして、一番のメリットは、発達特性への理解や配慮が得られることです。関連して、支援者(伴走者)が、職場の上司と調整をしてくれたり、困りごとがある際にサポートしてくれます。結果、悩みや不安を相談し、早期に解決できるため、長く働くことにつながります。デメリットとしては、一般雇用に比べると、収入や雇用形態の面で劣る場合があることや、キャリアアップの機会が少ないことです。

■さらに判断材料を増やし、見通しをもてるようにするために

それでも判断がつかなかったり、不安が高い場合は、経験談を聞いてみることをお勧めします。一般雇用の場合なら、新卒で就職した大学の先輩(OB/OG)の話を聞いてみることができるでしょう。
障害者雇用で検討している場合は、障害者雇用で就職された方の体験談が参考になります。障害者雇用で働いている方の体験談は、就労移行支援事業所等の支援機関で聞くことができます。
エンカレッジから就職された方の体験談を毎月更新していますので、ぜひ参考にご覧ください。
また、社会人になってから発達特性に気づき、それから自己理解を進めて障害者雇用で就職された方の体験談が聞けるイベントなどもあります(エンカレッジでも、障害がありながら社会で活躍するOBOGの方と話せるイベントを6月に企画しています)。
ご本人も不安でしょうが、ご家族もそういった情報を得て共有をしておくと、互いに納得した選択が可能になるでしょう。

今回の「あっこ先生のお悩み相談室」はいかがでしたか?
この企画では、読者の皆さまからのお悩み・ご相談を募集します!発達障害のあるお子さんの特性について、就職や転職、障害者雇用のこと、生活スキルや余暇の過ごし方についてなど、何でもOKです。
ご家族の皆さまからいただいたお悩みに、あっこ先生がお答えしていきますので、どしどしお寄せください◎
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