あっこ先生のお悩み相談室Case.6

あっこ先生のお悩み相談室Case.6
 
みなさん、ご無沙汰しております、高橋です。2021年になり、最初のお悩み相談室です。
今回は、下記のようなお悩みをご家族からいただきました。

お悩み相談Case.6

<お悩み>
この春に大学を卒業する息子がいます。在学中、学業と就活の両立が難しかったため、とりあえず学業を優先しました。しかし、卒業を目前に控え、卒業後もキャリアセンターや支援室を使えるのかもわからず、どのように就活を進めていったらいいのかがわかりません。このままでは、引きこもりになるのではないかと心配です。
<あっこ先生の回答>
この時期、テストや卒論も終わり、あとは卒業式を待つばかりですね。しかし、これからの就活をどのように進めていったらいいのか、大学の支援がいつまで受けられるのか、確かにご不安でしょう。
今回のご相談のように、在学中は学業に専念し、卒業後に就活のことを考えたいという選択をされた学生さん・ご家族に、私たちも数多く出会ってきています。まずは、安心してください。卒業後に就職のサポートをしてくれる支援機関は(地域によって差はありますが)複数あります。どんな支援機関でどのような支援が受けられるのか、また、卒業後大学はどこまで支援してくれるのか、をお伝えします。
まず、在学中に学業と就活の両立が困難であった場合には、ASDやADHDなどの発達特性がある可能性や、学業を主体的に進めることに困難さがあり、サポートが必要だったケースもあるでしょう。その場合は、就活においても何かしらのサポートがあった方がご本人もご家族も安心して進められるように思います。
というのも、就職活動こそ、自分でタスクやスケジュール管理をしていかなくてはならないですし、自分から行動することが求められます。また、ご存知の通り、就活=面接といっても過言ではないくらい、主体的なコミュニケーションをン求められます。自ずと発達特性がある方には苦手な領域です。
一方で、一般的な就活のイメージはつくものの、発達特性のある方やコミュニケーションが苦手な方の場合、他にどんな選択肢があるのかが見えづらい現状にあります。いくつかの選択肢を示したものが、以下の図になります。
よくある障害学生&グレーゾーン学生の就職ルート
 
苦手さがあっても、職種や環境を選び一般で(苦手さを開示せず)就活をする選択と、苦手さを開示して(いわゆる障害者雇用枠)で就職するという選択に分けられます。それらは大きく4つの選択肢になります。
みなさんが一番イメージしやすいのは、新卒・一般(正社員)でいくルートです。他には、新卒・一般での就職が難しかった場合や、学生時代にやってきたバイトはうまくいっており、周りからもかわいがっていただいているような状況であれば、ひとますできる業務を優先し、引き続きアルバイトで働くという選択も1つでしょう。
そして、次に考えられるのが、障害者雇用枠での新卒(正社員・契約社員)ルートです。さらにもう1つのルートとして、障害者雇用枠ではありますが、すぐに就職をするのではなく、まずは働くための学びや経験をしてから就職するというルートです。この「働くための学びや経験ができる」のが、職業訓練や障害福祉サービス(就労移行支援事業)の利用という選択になります。就労移行支援事業所は、特に都市部にはたくさんありますし、それぞれの特色によってもプログラム内容に違いがありますので、説明会や見学をして、自分が学びたいことに合致しているか、事前に確認することをお勧めします。
すぐに就職ではなく…というところで、焦りを感じる場合もあるかもしれませんが、発達特性やコミュニケーションに苦手さのある方は、働くイメージが持てない、自信がない場合も多いので、ビジネスマナーの習得やインターンシップを経験することで、結果的に自分に合った職場に自信をもって就職することにつながるように思います。
また、卒業後に障害者雇用での就職を希望する場合、下記の3つの点が変わることも知っておきましょう。

1)活用できる支援機関が変わる

活用できる支援機関が変わる
 
在学中から活用できるものもありますが、多くは卒業年次になってから利用できるものが多いです。理由は、日本の行政の縦割りにより、在学者は文科省の管轄、求職者の管轄は厚労省となるため、求職者となるのは卒業前年度からという解釈で整理されています。そのため、早くから就職の準備をしたいと希望し活用したいと思っても、登録などが可能になるのは卒業年次になってから、となってしまうのは残念な点です。

2)新卒か既卒で採用基準や業務内容が変わる

新卒か既卒で採用基準や業務内容が変わる
 
実は、新卒求人と既卒求人では、職種や処遇、主な対象、採用基準においての違いがあります。新卒の場合は、身体障害のある人をイメージした求人が多くを占めています。ですので、期待されることやスキルも、一般・新卒とほとん変わらないような内容や条件になっています。一方、既卒の場合は、新卒と比べて採用基準は緩やかになっています。その分、事務補助や軽作業など、業務内容があらかじめ設定されていることが多いです。この範囲では、精神障害や発達障害のある人向けの求人も多く見られます。

3)応募方法が変わる

応募方法が変わる
 
そして、最後に応募方法が変わります。一般の就活は面接重視ですが、障害者雇用の場合、実習やインターン重視になります。強みと合わせて、配慮内容の確認もインターンのプロセスの中で行われます。インターンの後は、必ず振り返りが行われ、当事者であるご本人の頑張った点や反省点、企業側からの良かった点、課題点のフィードバックが行われます。この点が重要で、フィードバックを受けた内容を理解し、成長していこうとする姿勢があるかどうかも評価されます。このように、インターンの中で強みや配慮事項を検証しながら採用が決まります。
最後に、大学での支援についてですが、卒業後1年はキャリアセンターでフォローアップをされている大学が多いように思います。ただ、現実的に考えると大学の求人の多くは、新卒・一般であるため、現状に即した支援機関を活用する方が得られる情報は多いでしょう。
在学中から障害者雇用を考えるにあたっては、なかなか詳細な情報が得られにくく、苦労される方も多いと思います。孤立しないように、ぜひ適切な支援機関を活用して、ご本人の現状やお困りごとに沿って、どのような選択がベターなのかを検討いただくのが良いように思います。

今回の「あっこ先生のお悩み相談室」はいかがでしたか?
この企画では、読者の皆さまからのお悩み・ご相談を募集します!発達障害のあるお子さんの特性について、就職や転職、障害者雇用のこと、生活スキルや余暇の過ごし方についてなど、何でもOKです。
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