発達障害に特化した就労移行支援の現場で見たもの

皆さんこんにちは!インターンの能澤直也です。
前回から始まったこのインターンブログ、今回はVol.2です。今回の記事では、私が2019年10月21日から10月25日に行って来たエンカレッジの就労移行支援事業所での現場実習で体験したことや、学び、気づき、また実際にご利用者と接してみたことで得た価値観の変化についてお話していきたいと思います!

就労移行支援事業所の1日

まずは、事業所での1日の流れを説明したいと思います。以下に示したものが、ご利用者の大まかなスケジュールです。
⏰ 9時30分:朝礼
⏰ 9時45分~12時:オフィスワーク
⏰ 12時~13時:お昼休憩
⏰ 13時~15時:講座・グループワーク
⏰ 15時~15時30分:終礼と掃除
午前中のオフィスワークでは、各自で時事レポートの作成やPCスキルアップのトレーニング、事務補助、軽作業などを行います。他にも、支援者と個別面談を行うご利用者もいます。また、ご利用者の所属するグループに応じて、オフィスワークの内容が日ごとに変わることも特徴として挙げられます。
午後は、所属するグループ関係なくご利用者全体で自己理解の講座を受けたり、グループワークを行ったりします。私が特に面白いと思ったのは、毎週金曜日に行われる「ミーティング」です。エンカレッジでは、月に一度エンカレッジのご利用者と支援者で外に出てレクリエーションを行う「ソーシャルクラブ」という取り組みがあります。ミーティングでは、みんなでどこに行くのかを計画したり、行った後はその振り返りをしたりするのですが、トピックが他の曜日のものと比べて少しポップで楽しいものである分、普段のグループワークではあまり発言をしないご利用者も、金曜日のミーティングではいつもより積極的に参加している姿があって印象的でした。
 
私が事業所実習で行ったのは、ご利用者の様子を「注意深く見る」ことでした。今回の実習の目的が、どのような方々がエンカレッジの就労移行支援を利用しているのかと、ご利用者が事業所でどのようなことに取り組んでいるのかを理解することだったからです。その他にも、ご利用者がどういったトレーニングをしているのか実際に体験してみようと思い、「ワークサンプル」というものにも挑戦しました。

ワークサンプルでは、名刺整理やハンコ押しなどの事務・軽作業の練習をすることができます。ワークサンプル体験やトレーニングを見ていて気づいたことは、エンカレッジでは、ご利用者が軽作業やPCスキルを練習する場だけでなく、それらを記録する仕組みも整っているということです。たとえば、ワークサンプルの場合、それぞれに記録用紙があり、そこに各ワークサンプルに対する所要時間を記入し、その用紙は本人が保管します。PCスキルのトレーニングでは、タイピングにかかった時間を毎回記録します。私自身、一週間だけの現場実習でしたが、その間に記録していたワークサンプルの結果に向上が見られ、もっと練習したいというモチベーションアップにつながりました。
 

学びと気づき

▶ 見えづらい障害とその多様性

ここからは、私が現場実習から得た学びと気づきに関してお話していきたいと思います。
最も印象的だったことは、発達障害の特性が思った以上に見えづらいものであったということです。私自身、幼少期より障害のある人と接する機会を多く持っていたことと、大学時代に心理学部生として発達障害に関して勉強したこともあったことから、発達障害に対してある程度の知識とイメージを持って実習に臨みました。現場実習に行く前は、外からは見えづらいとは言っても、実際に接してみれば認識できるものだと思っていました。しかし、現場で実際にご利用者と接してみても、正直なところ発達障害があるということの見分けが全くつかない人も非常に多く、とても驚かされました。それと同時に、発達障害があるいうことが非常に見えづらい人たちは、自らの障害をオープンにしなくてもある程度の対人関係を築くことができてしまうがために、就職後に職場での人間関係でしんどさを抱えていくケースが多いのだろうなと思いました。逆に、行動や言動から発達障害があることが見て取れる人もおり、まるで性格のように、ご利用者の障害特性が多様であるということも非常に印象的でした。
印象的
 

▶ 当たり前が当たり前ではない

ワークサンプルの中にピッキング作業がありました。そして、そのワークサンプルを実際に体験してみると、ピッキングリストに書いてある中のいくつかのアイテムがそもそも置いていなかったり、置いていても種類が違ったりしていることに気がつきました。そのことを職員の方に報告すると、そのようにピッキングのアイテムを完璧に揃えていない理由を教えてくださいました。それは、ご利用者に報連相の練習をしてもらうためだそうです。ご利用者の中には、報連相を行うことが難しいと感じる方々も当然います。つまり、そのような方々が報連相の練習を自然とできるように、あえてリストにあるアイテムを揃えていないのです。単純にアイテムが揃っていないと思って報告しただけの私は、この時初めて、自分が今までどれだけ自らの「普通」を基準として置いていたのかに気づかされました。報連相を行うことが難しい人もいると想像したことがなかった、ということに気づかされたのです。この気づきを通して思ったことは、発達障害に限らず、何かにしんどさを抱える人と関わっていく上では、私たちの当たり前が彼彼女らにとっては全くそうでない場合が往々にしてあるということ、またその「視点」を常に意識しておく必要があるということです。それが、より良いサポート、加えては、障害のある人ない人両者にとってより快適な社会を作ることにつながると感じました。

価値観の変化

▶ アメリカ留学を経て感じた「文化のあり方」と「発達障害」の関係

この実習を終えて、私の中で大きな価値観の変化が生まれました。それは、「社会のあり方」と「障害」の関係性に関する価値観・見方の変化です。実習中、ご利用者の様子を見ているうちにある疑問が生まれました。それは、「発達障害はその国や地域の文化に影響されるのではないか」ということです。

アメリカに留学していた際、本当に多くの個性的な人々に出会いました。正直なところ、私がアメリカで出会った人たちのかなり大部分の人は、エンカレッジのご利用者よりも個性的だったように思います。ただ、アメリカで出会った彼彼女らはそれほど社会生活に難しさを抱えているようには見受けられませんでした。そこで私が思い出したことは、アメリカにおける「普通」の幅の広さです。アメリカでは、もしある人に発達障害があって何らかの特性があったとしても、それによって周りの誰かが違和感を感じるということが少ない文化なのではないかと考えたのです。逆に、日本は「暗黙の了解」や「礼儀」を重んじ、いわゆる「世間体」を気にする文化であるために、発達障害のある人またはその傾向のある人は、生きづらさを感じることが多いのではないだろうかと思いました。つまり、発達障害とは、一定の定義や基準はあるものの、あくまでそれに気づくのは、本人や周りの人たちが違和感を覚える時であって、それは社会の文化的特徴に大きく影響を受けているのではないかということです。これが、私の中で「社会のあり方」と「障害」の関係性に関する価値観の大きな変化の一つです。
文化的特徴
 

▶ 障害のある人も輝ける社会を創るには

また、就労移行支援に対する考え方も少し変わったように思います。実習前は、就労移行支援は、「ご利用者が苦手を克服し、出来ないことを出来るようにすることによって、ある一定レベル何でもこなせるように訓練する場」という印象を持っていました。そして、障害のある人の就職先で多いのは、事務系の職種か清掃系の職種という認識でした。おそらく、このイメージと現状はあまり乖離しないと思います。しかし、実習を通してご利用者の様子を見ているうちに、上記のような分野以外での就職の可能性を求めることはできないだろうかと考え始めました。例えば、障害があるとしても、それぞれの障害特性をその人の一つの個性やある種の強みとして捉え(例えば、デザイン系の作業になると格段に集中力が上がるなど)、その強みや自らの潜在能力を伸ばすための就労支援の機会がもっと広がれば、障害のある人たちも、限られた職種だけでなく、新たな分野でのキャリアを模索することができるのではないかと思いました。そして、もし自らの得意なことを活かせる仕事に就くことができれば、そこでは障害のある人も今よりもさらにキャリアアップを考えることができるようになり、より多様性に寛容な社会が出来上がっていくのではと思いました。

最後に

今回の実習を通じて、本当に様々なことを見て、体験し、そして多くの学びと気づきを得ることができたと思います。特に、発達障害の特性が多岐にわたり、かつ本当に見えづらいということを知ることができたのは大きな学びでした。また、実習全体を通じて、難しさを抱えながらも就職に向けて日々頑張っているご利用者を見て、障害の有無に関係なく、人生の時間の大半を占める「働くこと」が人間に与える影響は、とても大きいものであると感じました。そんな中で自分は、障害のある人が自らの特性を活かすことで、より幅広い分野(例えばデザインやファッションなど)で働く選択肢を持つことができ、さらにキャリアアップも目指すことのできる社会の仕組み作りに関心があると気づくことができ、貴重な発見となりました。

現在の制度では、障害のある人にとっては就職の枠も限られており、就労移行支援の利用自体も基本的に二年間のみと、準備期間も非常に限られているのが現状です。働く上で、それぞれの個性や潜在能力を認めることによって、障害のある人たちもキャリアアップできる環境・文化を作っていくことに何らかの形で貢献したいと思いました。
キャリアアップ