8カ月の“学び直し”の期間は今後の人生の財産(他4事例)~発達障害のある大人の就職~

この記事では、エンカレッジから就職されたご利用者の就職ストーリーをシリーズでご紹介しています。
ご利用者本人からは、利用を決めてから就職に至るまでにどんなことがあったか、エンカレッジに通ってみての感想、率直な今の気持ちなどをお聞きしました。
また、ご利用者の就職をサポートしてきた支援者から見たご本人の変化や、就職に至るまでのプロセス、今後に向けてのエールも載せています。
📍この記事はこんな方におすすめ📍
  • 発達障害があり、就労移行支援の利用を検討している
  • 就職が決まった人が、どんな流れで就職できたのか知りたい
  • 就労移行支援事業所で実際にどんなことをするのか知りたい
今回は、2025年2月に就職が決まられたご利用者の就職事例から、5つのストーリーをお届けします!

就職事例1)8カ月の“学び直し”の期間は今後の人生の財産

エンカレッジ京都三条 ご利用者Hさん
  • ▶ エンカレッジ京都三条 ご利用者Hさん
  • 【性別】男性
  • 【年代】50代前半
  • 【障害種別】自閉症スペクトラム
  • 【利用期間】8ヵ月
  • 【職種/業務内容】仕分け業務及びその他軽作業
 
私はエンカレッジ京都三条を利用して約8カ月、無事に就職が決まりました。
現在51歳、社会人経験は長いものの、1つの会社に定着することができず、転職を繰り返して悩む日々が続きました。

エンカレッジを知ったのは、発達障害者支援センターの担当の方からの紹介でした。
前職を退職後に発達障害の診断を受け、障害者雇用での就職を考え始めた頃、支援センターの担当の方と、就職についての相談を開始しました。別の就労移行支援事業所への通所も考えましたが、エンカレッジの利用体験を受け、落ち着いた場所や集中出来そうな環境から、利用することを決めました。
当初は2024年1月からの利用開始でしたが、家庭の事情から2024年6月からの利用開始となりました。

エンカレッジの利用開始と同時に驚いたことは、若い利用者さんが多く、私とは20歳以上年齢が離れていて、上手くコミュニケーションができるのかと不安になりました。

エンカレッジの講座は、グループワークを大切にし、就職関連の講座も、グループワークを通して学習していきます。会話どころか、声を掛けることに恐怖を感じていた私は、何度か練習を積み、人前で自分の意見を伝えられるようになりました。生活の悩みもスタッフの方が親身になって、対応していただき、心強かったです。

初めての実習は緊張しましたが、集中力の維持と丁寧な作業を意識しながら、取り組みはじめました。それが実を結び、実習先の企業からの内定をいただくことができました。最初は1回の実習で分かるのか、私のような者でも良いのか、と半信半疑でした。しかし、この年齢から再就職ができることに嬉しくなりました。

現在でも人に対する恐怖心が、無くなった訳ではありません。
しかし、無事に就職することができたのは、スタッフの方々の温かい支援があったからです。そして、支援機関の方々の協力も大きかったです。約8カ月の利用期間中、会社では学べないことを、たくさん学ぶことができました。この“学び直し”の期間は、私の今後の人生にとって、貴重な財産になるでしょう。就職後は長く職場に定着できるように、努めて参ります。

エンカレッジの約8カ月は、絶望的な気持ちに陥った私に、自信を取り戻し、もう一度社会復帰のチャンスをいただいたものと考えています。スタッフの方々等、支えてくださった皆様への感謝の気持ちを忘れず、日々精進していきたいです。本当にありがとうございました。
就職事例59-1-1  就職事例59-1-2
 
🌟 支援者よりひとこと 🌟
2024年6月よりご利用いただき、無事にこの日を迎えることができました。これまでの経験から、利用開始後の面談で「コミュニケーションに恐怖を感じている」と吐露いただきました。慣れない環境、また年齢が離れたご利用者の中でのプログラム参加ということもあって、今までにないストレスを感じたこともあったかと思います。それでも、何事にも意欲的に「何事にもチャレンジしよう!」という想いが、企業からも非常に高評価をいただくことになりました。
プログラムや実習を通じて、様々な体験をされたことで、少しずつコミュニケーションへの恐怖心が和らいでいき、次第に相談内容が「他の利用者と雑談をしたいのですが、どのように話しかければいいと思いますか?」と、Hさんからのコミュニケーションにもチャレンジしようとされる姿は、本当に嬉しく思いました。
これからは、ご自身の生活や仕事を1番にしていただき、充実した日々を過ごしていただければと思います。改めて、ご就職おめでとうございます!
(エンカレッジ京都三条 スタッフE)

就職事例2)グループワークでビジネスマナーを一番実感した

エンカレッジ京都 ご利用者Mさん
  • ▶ エンカレッジ京都 ご利用者Mさん
  • 【性別】男性
  • 【年代】20代前半
  • 【障害種別】注意欠陥多動性障害、混合性不安抑うつ障害
  • 【利用期間】1年5ヵ月
  • 【職種/業務内容】事務作業、事務補助作業
 
私は入所当時ビジネスマナーなど一つも知っておらず、他のご利用者の話し方、行動に漠然と「丁寧で好印象だな」と感じていました。
ビジネスマナー講座などでも学べますが、やはり一番それを実感したのはグループワークでした。
どの行動、仕草、伝え方が好印象につながっているのか観察、そして即実践できる時間でした。いいご利用者、スタッフに関われたのでいいところをたくさん吸収でき、就職できたのだと思います。
楽しく、思い返しても彩りのある大切な時間になりました。スタッフの方々、そしてご利用者の皆様、ありがとうございました!就職しても頑張りたいと思います!
就職事例59-2-1
 
🌟 支援者よりひとこと 🌟
ご就職おめでとうございます!
Mさんは何事にも落ち着いて取り組む姿勢がとても印象的でした。
初めて取り組むことに対して、「まずは自分で調べてみる」という探求心を持っているからこそ、多くの事を学ぶことができたのだと感じました。
また、出社か在宅勤務で迷っている時期もありましたが、「相談できる人が近くにいる方が自分に合っている」ということを実習で知れたことが、今回の就職にも繋がる一因になったのではないかと感じています。
他のご利用者やスタッフの行動を見て自身に取り入れ実践をしたり、フィードバックしたことは細かくメモを取りすぐに意識をして改善をしたりと持ち前の吸収力の高さでエンカレッジや実習で成長していかれる姿はとても頼もしく、就職してからも活躍をされる姿が想像できます。
責任感が強く頑張りすぎる時がありますが、無理のないペースで頑張っていただきたいと思います。
新しい環境で新しいスタートを切りましたが、これからも一緒に頑張っていきましょう!
(エンカレッジ京都 スタッフM)

就職事例3)就労移行や障害者雇用のネガティブなイメージを崩してくれた

エンカレッジ京都三条 ご利用者Iさん
  • ▶ エンカレッジ京都三条 ご利用者Iさん
  • 【性別】女性
  • 【年代】30代前半
  • 【障害種別】自閉症スペクトラム症
  • 【利用期間】6ヶ月
  • 【職種/業務内容】事務作業、事務補助作業
 
エンカレッジを利用できて、すごく良かったと思っています。本当にありがとうございました。自分に合った働き方、職場環境を知ることができ、それにマッチした就職が決まって嬉しいです。
エンカレッジに来る前は、前職の経験や家族、友人の経験談から、自分が楽しく前向きに働ける職場など無いのでは?と思っていました。
また以前通っていた就労移行支援事業所への不信感から、就労移行そのものや障害者雇用に対してもネガティブなイメージを持っていました。ですがエンカレッジでは、スタッフさんが丁寧に親身にご対応下さり、そうした私の中の不信感や悪いイメージを徐々に崩していってくださいました。その結果、働くことに心から前向きになれ、良い就職にも結び付いたのだと思います。

プログラムに関しては、とくにソーシャルクラブが深く印象に残りました。
通う前は正直参加したくないと思っていたのですが(以前の事業所で他の利用者さんとのコミュニケーションが難しかったこともあり、プログラム内とはいえ利用者さんと事業所外で関わることに抵抗がありました)、実際に参加してみると楽しく、また利用者間で役割を決め、お互いにサポートしながら計画を遂行する経験は勉強になりました。

また事業所内の細かなルールなどに頻繁に調整が入るのが印象的でした。
より良い事業所にしていこうとスタッフさんが考えてくださって、工夫を重ねてくださっている、その真剣な姿勢が伝わってきて、利用者として嬉しく思っていました。

今までありがとうございました。
これからもよろしくお願いいたします。
就職事例59-3-1
 
🌟 支援者よりひとこと 🌟
ご就職おめでとうございます。 Iさんは前職の経験もあり、仕事のスキルはもちろん、周囲とのコミュニケーション力は高く、場を明るくする力をお持ちです。
エンカレッジのソーシャルクラブでは、他の利用者さんと一緒に和やかな雰囲気で話し合いをされ、素敵な計画を考えられていました。
相手の意見を尊重し、話し合いを進行される姿は頼もしかったです。

就職活動では、「継続して働く」という長期的な視点を持って取り組まれました。
前職やエンカレッジの経験から、働くうえで大切にしたいことや課題となる点を明確にされたと思います。
就労先の実習では、緊張もあったと思いますが、Iさんの仕事のスキルや場を明るくする力、周囲とのコミュニケーション力で高い評価をいただきました。

Iさんが、企業実習を通して「ここで働きたい」と思える会社に出会えてよかったです。
長く安心して働けるよう、就職後もしっかりとサポートをしていきたいと思います。
(エンカレッジ京都三条 スタッフK)

就職事例4)合意形成の図り方は大切なポイント

エンカレッジ天満橋 ご利用者Dさん
  • ▶ エンカレッジ天満橋 ご利用者Dさん
  • 【性別】男性
  • 【年代】20代後半
  • 【障害種別】自閉症スペクトラム
  • 【利用期間】1年
  • 【職種/業務内容】事務補助、印刷、仕分け、清掃業務等
 
2024年3月の利用開始より、約1年間お世話になりました。エンカレッジでの毎日では様々な講座やグループ活動をメインに多くの学びがありました。
特に他者に対する尊重や思いやり、グループで一つのゴールに向かっていく合意形成の図り方は、チームの一員として活躍する上で大切なポイントだと改めて実感できました。
エンカレッジでの学び・経験・皆さまとの想い出を、これからの社会人ライフに活かしてまいります。
 
🌟 支援者よりひとこと 🌟
Dさんは何事にも丁寧に、コツコツと取り組むことができる方です。イラストを描くことがお好きで、事業所内の掲示物の挿し絵やエンカレ通信(エンカレッジの広報誌)のデザインをたくさん作成してくださりました。
またコミュニケーションの練習にも力を入れておられ、講座で「話の聞き方、伝え方のポイント」を学び、グループワークや日々の活動で実践されていました。今回就職が決まった会社の実習でもその部分を意識し、会社の方からは「他の方の意見も聞きつつ、自発的に話しかけられていたところがよかった」とお話がありました。
就職後もいろいろな人と関わりながらお仕事をされるかと思います。もし「これでいいのかな」と迷った時はぜひエンカレッジや周囲の方にも相談していただければと思います。Dさんらしくご活躍されることを、陰ながら応援しております!
(エンカレッジ天満橋 スタッフY)

就職事例5)エンカレッジで得られたこと

エンカレッジ早稲田駅前 ご利用者Sさん
  • ▶ エンカレッジ早稲田駅前 ご利用者Hさん
  • 【性別】男性
  • 【年代】20代
  • 【障害種別】トゥレット症候群、強迫性障害
  • 【利用期間】1年3か月
  • 【職種】ヘルパー業務、事務業務
 
1.利用の経緯
病気により大学を休学していた際、お世話になっていた心理士さんの勧めで当事業所をご紹介いただき、復学後は 2ヶ月に 1回の頻度で面談をさせていただいておりました。
その後、障害オープンの一般雇用として新卒で就職するのですが、自身が患っているトゥレット症候群の理解がなかなか得られず、すぐに自己退社してしまいます。路頭に迷っていたころ、エンカレッジの存在を想起し、利用者として通所を開始したという経緯になります。
利用開始当初は精神的に満身創痍の状態で、すぐに体調を崩してしまい、長期のお休みをいただくことも多くありました。しかし、徐々にエンカレッジという環境に慣れたり、生きる意欲が湧いてきたりすることで、スローペースながらもメンタルも通所も安定していきました。
週5日通えるようになるまでおよそ10ヶ月程度はかかりましたが、それからは毎月体験実習を重ねることで、「働くこと」に対する視点が「敵対的・忌避的」な意味合いから「意欲的・所属的」なそれにシフトしていった実感を得ました。
そんななか、偶然でしたが自身の障害に非常に理解のある企業からお声がけをいただき、長期インターンの末、内定を掴むことができた次第です。
2.エンカレッジで得られたこと
エンカレッジでわたし自身が学べたこと・体得できたことは、
1)精神のメンテナンス方法
2)「頼る力」を含めたソフトスキル
3)社会での立ち回り方/立ち振る舞い方
に大別できるかと思います。1年を超えた利用でしたので、この間にメンタルの安定につながる方法は模索と試行錯誤を重ねてきました。
その際に役立ったのが当事業所での講座や週に 1回ある面談です。座学でさまざまなヒントを得て、面談の場で獲得した知恵や工夫の言語的アウトプットをすることでこころの整理も同時に行うことができました。
「頼る力」に関しては個人的にもっとも重要視しているスキルで、発達障害を持ちながらひとり暮らしをしている身としては切実な課題でもありました。
エンカレッジのスタッフさんに相談を持ちかけるにしても、話しかけるタイミング・「間」の取り方・要点を押さえた説明方法など、効果的に悩みを伝えることには多くの要素が絡み合っています。
このスキルはスタッフさんや他の利用者さんの様子を観察し、自分なりにブラッシュアップさせることで意識的に身体に染み込ませていきました。
それが功を奏したのか、エンカレッジ以外の支援機関を頼る際にも能動的につながり弱く依存(= セーフティネットを張り巡らせる)しつづけることができたと自己評価しています。
「なにかあっても誰か/どこかが助けてくれる」と思える生活は精神の安定にも直結します。
社会での立ち回りや立ち振る舞い方については、当事業所の自己理解講座などを通じて自分自身を俯瞰できるようになるにつれて、〝社会〟での自己の立ち位置を感覚で掴めるようになり、「働く」意識を主観だけだった視野からより引いた目線で捉えることができるようになりました。
その感覚を敷衍させ、自分のポジションから実行できる社会的振る舞い方を曲がりなりにも体得していきました。エンカレッジでのプログラムすべてが糧となり、利用前のつらい状態から現在の前向きな態度に変遷していった実感があります。
もちろん、二次障害の抑うつ感や希死念慮も含め、わたしを取り巻くネガティヴな要素を払拭できたわけではけっしてありませんが、むしろ、その負の側面と末永くうまく付き合っていく(= ネガティヴ・ケイパビリティ)ことこそが結果的に「良く」生きることなのだと痛感しています。
3.最後に
当事業所での社会生活のなかで、スタッフさんからのフォローや利用者さんたちとの交流によって〝回復〟していき、この度就職することができました。
関係者の方々への感謝の念でいっぱいですし、エンカレッジにつながることができ、ほんとうに良かったとこころから思っています。
1年と4ヶ月間、大変お世話になりました。今後も定着支援等、なにかと頼らせていただくこともありますが、これからも何卒よろしくお願い申し上げます。ありがとうございました!
就職事例59-5-1  就職事例59-5-2
 
🌟 支援者よりひとこと 🌟
ご就職おめでとうございます!
学生の頃から度々エンカレッジにお話に来てくださっていたことを今でも思い出します。
通所をする中で体調を崩すこともありましたが、休んでは立ち上がってを繰り返して徐々にご自身のペースを掴んでおられたと思います。
辛い時期もあったことと思いますが、その経験をご自身でしっかりと向き合って時には人生を振り返る自分史の作成をするなどして咀嚼されていました。
物事の振り返りや様々なことへの興味関心、温かいコミュニケーションなどが強みとなり今回の就職でも存分に活かされていると感じます。
今後も様々なことに挑戦や冒険をして、楽しんで、疲れたら休んで、Sさんなりのライフスタイルを充実させてくださいね。
おめでとうございます!
(エンカレッジ早稲田駅前 スタッフW)
 
いかがでしたか?「発達障害のある大人の就職事例」はシリーズとして今後も定期的に発信していきます。乞うご期待ください!