”人ありき”の障害者雇用への可能性〜はじめるCafe!の価値とは?

1)企画趣旨

エンカレッジで今年度からスタートした「はじめるCafe!」。障害者雇用をお考えの企業様と発達障害のある方が出会い、交流できる機会をつくり、障害者雇用をはじめる”キッカケ”を作る企画です。
最近では、法定雇用率の引き上げや精神障害者の雇用義務化などに伴い、企業における発達障害のある方への関心は高まってきています。しかし、企業も、当事者の方も、お互いのことを知る機会は少なく、なかなかうまく雇用が進まないという現状もあります。
より多くの発達障害のある方に就労の機会を創っていくためには、まずはお互いが出会って、人となりを知って、次につながるきっかけをつくることが必要ではないかと考え、今回の企画に至りました。
はじめるCafe!は、通常の面接とは異なり、カフェで雑談するような感覚で、企業の方と発達障害のある方が気軽に交流できるイベントです。
2019年7月に大阪で第一回目のイベントを開催し、障害者雇用を行う企業5社、発達障害のある方15名が参加しました。そこから、実際に3名が内定しています。今回は、2019年11月12日(火)に京都では初めてのはじめるCafe!を開催しました。

2)イベント当日の様子

イベント当日は、よく晴れた気持ちのいい秋晴れの日。京都は五条にあるレンタルオフィス「GROVING BASE」の会場をお借りして開催しました(カフェスペースもある、とってもおしゃれな場所です!)。
参加者は、京都に事業所のある企業3社、エンカレッジと就労支援センター アステップむろまちから計11名のご利用者が参加されました。
京都初開催
 
今回は京都では初開催ということもあってか、企業の方もご利用者もスタッフもみんな少しソワソワした様子。緊張した面持ちで受付を済ませる方、資料に目を通しながら開始時間を待つ方などがいらっしゃいました。
イベントは14時にスタート。はじめに、エンカレッジ京都三条 所長の小谷から開会の挨拶があり、司会よりイベントの趣旨やスケジュールの説明が終わった後は、さっそく参加企業のPRタイムに入りました。
参加企業のPRタイム
 
PRタイムでは、各社とも5分間で会社概要、仕事内容、募集内容、当社のジマンをアピールされました。
食肉の小売販売・卸売業をメインに行う株式会社銀閣寺大西様は、工場での食肉加工職を募集。京都を代表する旅館や飲食店がお客様であり、京都の食文化を支える仕事のやりがいについてお話しされました。
次に、絨毯やカーペットの卸売業を行う株式会社プレーベル様では、本社・総務課での一般事務、倉庫での軽作業、PCでのデータ入力の3つの職種での募集。会社の施設や場所の便利さをアピールされ、インテリア好きな人には特におすすめとお話しされました。
最後に、病院や介護、保育施設などを運営する洛和会ヘルスケアシステム様では、事務職・看護士など専門職の補助業務での募集。充実した福利厚生や働きやすい環境、社内レクリエーションなどについてアピールされました。
続いては、ご利用者の皆さんから2分間の自己紹介タイム。事前に準備した自己紹介カードを使って、一人ずつ前に出てお話しされました。緊張しつつも堂々とした姿でお話しされる方、ハキハキと笑顔でお話しされる方もいて、支援者と事前にしっかりと準備されてきた様子が伺えました。
アルバイトや職場実習での実績から、集中力の高さや作業の正確性や効率の良さ、勤務の安定性などについてアピールされる方もいれば、毎日自炊をしています、手芸が得意で手先が器用と言われます、など日常や趣味のことからご自身の人となりを紹介される方もいました。企業の方も、メモを取りながら真剣に話を聴かれていた様子が印象的でした。
自己紹介タイム
 
自己紹介タイムが終わると、休憩を挟んでいよいよ本日のメインである交流会へ。ちなみに休憩時間には、支援者が担当のご利用者に自己紹介プレゼンの出来栄えについてすかさず褒めたり、フィードバックを行ったりする姿も見られました。
交流会は、企業1社・参加者3~4名を一つのグループとして、サイコロトーク(サイコロを振って、出た目のテーマに合わせて話をするゲーム)を行いました。トークの内容には、セールスポイントや仕事の話はもちろん、趣味の話や初任給を何に使いたいか?など、参加者の普段の姿が垣間見えるようなものもあります。各グループには支援者も入り、ファシリテーターとして話を拾ったり、場を盛り上げたりしていました。企業の方もご利用者も、自分の好きなことや趣味の話になるといきいきとした表情でお話しされていたのが印象的でした。
また、ご利用者から企業の方に質問をする場面もありました。「働く上で求めることは何ですか?」「どんなポリシーを持って仕事されていますか?」など働くことや仕事についての質問はもちろん、「好きなお肉の部位は何ですか?」「和菓子が好きとおっしゃっていましたが、おすすめのお店はありますか?」など、面接など選考の場ではまず聞かれないであろう話題も上がっていました。
さらに企業の方からも、「働くうえで不安に思うことはありますか?」などとご利用者に質問を投げかける場面もあり、障害特性のことも自然と話せるような雰囲気もありました。
交流会の様子1
 
さらに、「今でこそ楽しく仕事できているけど、最初はやりたいことなんてなかったよ」「仕事を長く続けるためには、欲張らずに、まずは言われたことを言われた通りにできることが大事。何か一つ、ここは安心して任せられるな、と思うところができればそれで十分」など、ご自身の仕事経験や働くことへのアドバイスをお話ししてくださる企業の方もおられました。
はじめるCafe!は、企業もご利用者も「お互いを知って理解を深める」という目的で集まっている場だからこそ、こういったお話も出たのではないかと思いました。
交流会の様子2
 
交流会終了後は、全体で集まってイベント後の流れについての説明があり、エンカレッジ京都エリア統括の高橋からの挨拶をもって、無事にイベントが終了しました!

3)企業様・ご利用者の声

イベント終了後は、企業の方と振り返り会を行いました。振り返りでは、以下のようなご意見をいただきました。
【企業様の声】
✅ (発達障害のある方に)出会える機会自体が有り難い。障害のある方の特性や会社に求めることなど分からないことだらけだったが、とても勉強になった。 リクエストして頂いた中で、こちらでもできることはやっていきたい。
✅ (話をする中で)人となりが何となく分かった。明確な受け答えをされている方が多く、逆にどういう特性があるのか見えづらかった。
✅ 障害のある方を受け入れる現場の風土を変えていかないといけないと常々思っており、コツコツ取り組んでいる。今回のイベントで、この人だったらこんな仕事ができそうだな、というイメージができた。雇用枠ありきではなく、こういう人がいるから受け入れませんか?と現場に提案しやすくなる。通常の採用とは逆の流れをつくれる可能性があるのではないか
企業様の声
 
また、ご利用者のアンケートには、こんな感想がありました。
【ご利用者の声】
📍 自分が言った「信頼関係」の話を全肯定してもらえたのが嬉しかった(サイコロトークのお題にあった「仕事をする上で大切にしたいこと」のお話)。
📍 担当の方と食の好みが合い、盛り上がった。会社の印象は、業界的に休みが取りづらい印象がありましたが(中略)案外一般企業と変わらないのかという印象を受けた。
📍 サイコロトークを通じて、業務に深く長く打ちこむことができるコツや企業同士の取引の実態や裏側を知ることができてよかったです。
📍 サイコロトークの(お題にある)やってもらいたい仕事以外にも、仕事をする中で大切な事を知ることができて良かったです。

4)最後に~はじめるCafe!の価値とは?

これらを踏まえて、はじめるCafe!の価値について改めて考えてみたいと思います。
まずご利用者にとっては、普段いる事業所とは異なる環境で企業の方や他の事業所のご利用者とお話しすることで、刺激や学びの機会になるということです。実際に、ご利用者のアンケートから、企業の方とのお話から仕事や働くことについての助言を頂けたり、趣味や興味のあることの話で盛り上がったりしている様子が伺えました。
また、面接のように畏まった場ではないからこそ、企業の方にも、取り繕うことなく自身の普段の姿を見て頂ける機会になっていると思います。
はじめるCafeの価値
 
そして、企業にとっては、人(個人)を見て採用につなげられる機会なのではないかということです。最近では、求人サイトや人材紹介など、条件に合う応募者を集めて、ふるいに掛けるような従来の採用手法だけでなく、人との出会いやご縁をきっかけにして入社に至る採用手法が注目を集めています。たとえば、リファラル採用(いわゆる縁故採用)や、イベント等で自社と接点があった人と長期的にコミュニケーションをとり、関係性を築きながら、お互いにタイミングが合った段階で入社に至るケースなどです。
前者の場合はあくまで会社として求める条件があり、それに適合する人を集めて選定するという方法ですが、後者の場合はまず人(個人)がいて、その人の特徴や適性、価値観などと、自社の理念やその時々に必要とされる仕事や役割などがマッチして初めて採用に至るという流れになります。これらは、すでにある枠組みに人を当てはめるのか、目の前にいる人を見てマッチングを検討するのか、という点で大きく異なります。
このはじめるCafe!は、企業の方とご利用者が出会って、話をして、お互いのことを知ることから始まります。もちろん、企業側には想定している求人内容があるわけですが、実際にご利用者と会ってみることで、「こんな人となりの、こんな強み弱みを持った人がいる」ということが具体的に分かり、それをもとに「自社で採用するならどうなるだろうか?」「もともとは想定していなかったけど、もしかしたらこんな仕事ならやってもらえるかもしれない」といったこともイメージしやすくなります。
このように、人ありきで仕事や役割が生まれていく採用の形は、その後の職場定着という観点においても良い影響があるのではないでしょうか。
いずれにしても、お互いがお互いのことを知って、よりマッチ度の高い採用・就職につなげるためのスモールステップとして、企業にとってもご利用者にとっても価値のある企画なのではないかと感じました。

▶ はじめるCafe!のご案内

はじめるCafe!
 
はじめるCafe!では、障害者雇用をお考えの企業様と発達障害のある方が出会う機会、より良いマッチングに繋げるための時間と場所をご提供しています。
ご興味のある企業様は、まずは「はじめるCafe!事務局(大阪/京都)」までお問い合わせください。