コロナ時代において採用の評価はどう変わる?~障害者雇用への影響も見据えて~

コロナ時代において採用の評価はどう変わる
 
さて、今回はコロナ時代における、採用評価について考えてみたいと思います。
最近、私の周りで学生の就職・キャリア支援を行っている皆さんから、大変興味深い話を聞きました。
1つ目は、オンライン面接が始まった後、昨年までなら確実に内定を得られたであろう学生がなかなか選考を通過せず、逆にちょっと大丈夫かな?と思った学生が選考を通過することが相次いだ、という内容。
そして2つ目は、インターンやアルバイトの中では実務能力がすごく高いんだけど、人付き合いが苦手な学生が、就活が上手くいかずに落ち込んでいたのに、ある会社(グローバルな有名企業)ではすごく優秀だと評価され、すぐに内定が得られた、という内容です。
会社によっても採用基準が違いますし、偶然の域を超えない話ではありますので、これだけで何か言えることはありませんが、いくつかの疑問が湧きました。
それは、
▶ 常日頃、企業はどのような方法で応募者を評価しているんだろうか?
▶ そして、選考方法がオンラインに変わったことにより、評価方法・基準は変わるんだろうか?
▶ さらに、障害者雇用への影響はあるのか?
ということです。
順番に考えてみたいと思います。

応募者への採用評価とは?

企業の採用評価について、色々と調べてみる中で、元Googleの人事責任者ラズロ・ボックが書いた「WORK RULES!(ワークルールズ!)」という本に行き着きました。この本の中で、「面接時の評価を元に、入社後のパフォーマンスをどの程度予測できるか?」という論文が引用されています。
この論文の中で、質問を特に決めないで自由な会話形式で行われる面接(非構造化面接)は、入社後のパフォーマンスを14%しか説明しないとの結果でした(決定係数14%)。
逆に、入社後のパフォーマンスを説明するのに有効(決定係数が高い)なのは、以下の3つです。

<評価手法と入社後のパフォーマンスとの関係(関連性が高い手法)>

✅ ワークサンプル(採用後の職務に似たサンプルを応募者に与え、結果を評価する、インターンシップやケーススタディなど):29%
✅ 一般認識テスト(正誤判定をする一般的なテスト):26%
✅ 構造化面接(回答を評価する明確な基準を持つ質問に答える面接):26%
(ちなみに「筆跡による能力解析」の決定係数は0.04%です。そう考えると、手書きの履歴書は、そこまで重要度が高いものではないのかもしれませんね。)
ここから分かるのは、
✅ どのような方法であっても、入社後のパフォーマンスの最大30%程度しか説明できないため、完璧な方法はなく、色々な方法を組み合わせるのが望ましい
✅ 質問を特に決めず、自由な会話形式での面接(非構造化面接)だけで応募者のスキルや能力を測定するのはリスクが高い
といったところでしょうか。
興味深い結果ですね。
さて、ここからは、さらにコロナの影響で、選考方法がオンラインになることにより、どのような影響が出そうかを考えてみます。

オンライン化の影響について

主な評価手法として、非構造化面接、ワークサンプル、構造化面接、一般認識力テストを挙げましたが、それぞれオンラインになると、どんな影響が出そうか、個人的な主観ではありますが、考えてみます。

📍 非構造化面接

特に評価項目を決めていないので、面接官によっては、対面時の立ち居振る舞いや表情、声のトーンなど、様々な切り口での評価を行っていた可能性があります。しかし、オンラインになると得られる情報が限られてしまいます。
したがって、今まで評価していたものが評価できなくなり、結果として評価基準が以前と変わってしまったり、より話の内容にフォーカスされることで、今まで見過ごしていた受け答えの能力が評価されやすくなる、ということが起こるのかもしれません。

📍 ワークサンプル

今までは、職務を経験するインターンシップなどにより、応募者の評価が行われていました。しかし今年は、企業内でインターンシップを縮小する企業が増えると考えられることから、採用評価ができる場面が少なくなってしまいます。
とはいえ、ここは工夫の余地があり、職務をオンライン上で体験するなど、工夫の余地があるかもしれません。

📍 構造化面接

「回答を評価する明確な基準を持つ質問に答える面接」という定義から分かるように、そもそも「回答」内容にフォーカスされているため、その人の表情や声のトーンといった、受け手によって判断軸が違うものを評価していません。したがって、オンライン化への影響は全体として少なめではないかと感じています。

📍 一般認識力テスト

オンライン上でも、基本的には今までと変わらない条件でやりやすいと思います(オンラインの向こうで不正が行われないという前提ですが)。
ですので、この点は、オンラインになってもそれほど影響が出ないのではないかと思います(ただし、私自身の経験が少ない領域なので、ひょっとしたら見えない影響があるかも?)。
以上をまとめると、
✅ 比較的影響が大きいと考えられる、非構造化面接とワークサンプル(インターンシップ等)は、今までの取り組みから変化が起こる可能性が高く、
✅ 構造化面接と一般認識力テストが比較的影響が少ないと考えられるため、より安定した評価につながりやすい
といったことになるでしょうか。
(※あくまで主観的な仮説ですので、今後どうなっていくかウォッチしていきたいと思います。)

障害者雇用への影響

さて、このオンラインへの変化が障害者雇用に与える影響を考えてみます。
オンラインの面接の場面では、雰囲気などの曖昧な要素ではなく、受け答えにフォーカスされやすくなることから、面接の場で緊張し過ぎたり、立ち居振る舞いに苦手さがある精神・発達障害のある方の中には、むしろ話の中身に注目してもらえるし、緊張もそれほどしないので、やりやすくなる、といった声が聞かれます。
一方で、知的・精神・発達障害者の採用を中心に、面接に加えて企業内ワークサンプル(インターンや実習)がコロナ以前からすでに多用されており、職業評価や現場に馴染むかといった視点での評価が行われている現状があります。
もし、オンライン化の影響でワークサンプルが行われないとなると、障害者本人も職務が本当に出来るか不安になるかもしれませんし、採用側も適切な評価が出来るか不安になることが増えるかもしれません。
まとめると、
✅ 面接においては、一部の障害者に対してはポジティブな結果につながることもありますが、
✅ ワークサンプルが行われなくなったとすれば、障害者、企業双方にとってマイナスであると思います。
そのような環境下において、過去の良いものは残しながらも、取り組みをどうアップデートしていくのか。そんなことを考えていきたいと思っています。
今考えているキーワードは、「採用と学習の両立」、「オンラインインターン」、「ジョブ体験」といったところです。
長くなりましたので、また次の機会に、上記のような取り組みのアップデートについても書いてみたいと思います。

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社長の独り言